ユニティ(Unity)

Behavioral Principles

Summary

社会的影響・説得の中でのユニティ(Unity)は、相手を説得前から“味方”に寄せる「関係構築」の影響原理です。

一言で言うと、「“好き”より強い、“同じ側(one of us)”の力」です。」

いつ使うか:新規獲得のCPA改善だけでなく、コミュニティ/ロイヤルティ/紹介(Referral)を“施策”から“自分ごと化”へ引き上げたい時。


秀逸ポイント

ユニティの秀逸さは、「好意(Liking)を作れなくても効く」点にあります。Cialdiniは、表層の共通点で“感じが良い”を作るのがLikingだとすれば、ユニティは“同じカテゴリに属する”という所属感(Belonging)を作る力だと区別します。
さらに、ユニティは他の原理の“ブースター”にもなります。希少性や社会的証明が、外部者の声より「身内の声」として解釈されるため、同じ訴求でも反応率が変わります。
マーケティング実務では、コピーやクリエイティブの一文(「私も同じ立場です」等)で効きが変わる一方、誤ると分断(内集団ひいき/外集団攻撃)にも接続しうる“高出力”な概念です。だからこそ、倫理設計(どんな“私たち”を作るか)が成果とブランドを同時に左右します。


提唱者・発表時期

行動科学/説得研究で著名な社会心理学者 Robert B. Cialdini が、説得の原理を「6原理」から拡張し、第7の原理としてUnity(ユニティ)を提示しました。
Cialdiniは2016年の著作『Pre-Suasion』で、説得“前”に受け手の心的状態を整える重要性を論じ、その文脈で「共有されたアイデンティティ(we-ness)」の強さを強調しています。
その後、2021年の改訂版『Influence: New and Expanded』ではUnityが新たに加わり、体系としても「7原理」として整理されています。


詳細説明

1) ユニティとは何か(定義)

ユニティは「共有されたアイデンティティ(私たち意識)により、相手の提案を“外部からの説得”ではなく“同じ側からの提案”として受け取りやすくなる」状態を指します。Cialdiniは端的に「like you ではなく one of you」と表現しています。
InfluenceAtWork(Cialdiniの組織)でも、Unityは7原理の一つとして整理されています。

2) なぜ効くのか(理論的背景:社会的アイデンティティ)

ユニティは、社会心理学の社会的アイデンティティ理論(自分を「個人」だけでなく「集団の一員」として捉える枠組み)と親和性が高いです。
また、最小条件集団パラダイムが示すように、人は些細な分類でも内集団バイアスを起こし得ます(=“私たち”は意外と簡単に立ち上がる)。
このため、「同郷」「同職種」「同じ課題を抱える人」「同じプロジェクトの当事者」など、分類ラベルの設計が説得効果に直結します。

3) 混同しやすい概念との違い(比較表)

概念何を根拠に動くか典型表現ユニティとの違い
ユニティ(Unity)所属(同じ側)「私たち」「同じ立場」“好意”不要でも成立しうる
好意(Liking)好感・類似・親近感「感じが良い」「趣味が合う」表層の共通点中心。ユニティは“カテゴリ所属”が核
社会的証明(Social Proof)多数派・他者の行動「みんな使ってる」“誰の多数派か”が重要。ユニティがあると「身内の多数派」になる
コミュニティ(Community)構造(場)・関係性の継続「参加する場」「運営」コミュニティは“器”。ユニティは“心理状態”。コミュニティがなくてもユニティは起こる
ブランドコミュニティブランド中心の社会関係「ファン同士の関係」学術的には“構造化された関係”が条件

コミュニティとの違い(重要)
コミュニティは「場・制度・参加導線・運営」といった“仕組み”の話です。一方ユニティは、「その瞬間に相手が“私たち側”だと感じるか」という“認知・感情のスイッチ”です。
したがって、コミュニティ施策(会員制度、サロン、SNSグループ)を作っても、ユニティが設計されていなければ「人が集まるだけ」で終わります。逆に、コミュニティがなくても、コピーや体験設計でユニティが立てばCVRが動くことがあります(例:「私もこの大学の学生です」の一言で寄付が増えた研究例)。

4) “マクロなナッジ/ミクロなナッジ”としてのユニティ

ナッジ(nudge)は「選択肢を禁じず、インセンティブを大きく変えずに、選択アーキテクチャで行動を予測可能に変える介入」と定義されます。
ユニティは、ナッジの中でも特に**“事前の解釈フレーム(この人は身内か外部者か)”**を変えるため、Pre-Suasion(説得前の準備)として効きます。

  • マクロなナッジ(環境側):会員制度/認定バッジ/“当事者ラベル”の付与(例:認定ユーザー、卒業生、同業者ネットワーク)

  • ミクロなナッジ(接点側):LPの一文、フォーム直前の文脈、導入動画の語り口を「私たち」基調へ(ただし虚偽は逆効果)

5) ラポール、ミラーニューロン、同期(シンクロ)との接続

ラポール(rapport)は信頼形成の基盤で、研究では**ポジティブ感情・相互注意・協調(同調)**などの要素として整理されます。
また、非意識的な模倣(いわゆる“カメレオン効果”)は関係形成に寄与し得ることが報告されています。
ここから実務的には、「同じ動き/同じリズム/共同作業/同時体験(同期)」がユニティを補助する、という設計が可能です(例:チャレンジ企画、同時視聴、共同投稿)。
一方で、ミラーニューロンは魅力的に語られがちですが、共感など複雑な機能との関係は単純ではない、という批判的整理もあります。したがって施策上は「科学っぽい言葉で正当化」するより、**同期体験→ラポール→“私たち”**という観察可能な設計に落とすのが安全です。

6) 倫理・副作用(分断を“成果”にしない)

ユニティは強力ゆえに、安易に使うと「敵を作って結束させる」方向へ滑りやすい(政治的分断の例が語られることもあります)。
マーケティングでは、短期KPIのために外集団を暗に貶めると、長期的にはブランド毀損や炎上、採用・パートナーシップにも波及します。設計上の原則は、“we”を狭めて勝つより、“we”を広げて育てるです。


具体例/活用案

事例1:Nike Run Club(「クラブ」を実体化して“世界チーム”にする)

Nike Run Clubは「When we say ‘club,’ we mean it」と掲げ、友人や他のランナーと“体験とチャレンジ”でつながる設計を前面に出しています。
特にCommunity Challengesは「世界のランニングチームの一員として、集合距離目標に向けて一緒に走る」と説明され、単なる運動アプリを“私たちのクラブ活動”へ変換しています。
示唆:プロダクト価値(機能)を説明する前に、参加者の自己定義を「個人」→「クラブの一員」へ寄せる。AIマーケなら、行動ログから“所属に刺さる言い方(例:初参加者/復帰者/継続者)”を出し分けつつ、言い過ぎ(過度な馴れ馴れしさ)を避けるガードレールが重要です。

事例2:Harley-Davidson H.O.G.(所有体験を“メンバーシップ”に昇格)

H.O.G.は「全世界のハーレーオーナーが情熱を語り合い、一緒に自由を祝う場」と公式に説明され、所有を“所属”へ転換しています。
Harleyのブランドコミュニティ構築はHBRでも重要事例として取り上げられています。
示唆:ユニティは「購入後」に強く効きます。CRM(メール、アプリ、イベント)で“私たち言語”と儀式(参加・称号・ストーリー)を設計すると、LTVや紹介の説明コストが下がります。

事例3:LEGO Ideas(共創を“ファンの当事者性”に変える)

LEGO Ideasは、ファンが作品を投稿し、投票(support)し、条件を満たすと製品化検討に進む共創プラットフォームです。
「10,000 supporters」が大きなマイルストーンであり、到達後にレビュー対象になると明記されています。
示唆:ユニティを最短で立てる方法の一つは「共同で作る」です。生成AIを使うなら、投稿支援(アイデアの言語化、画像生成の補助、テンプレ提供)を行い、作品の主語をあくまでユーザーに置くと、当事者性(=ユニティ)が崩れにくいです。

事例4:ブランドコミュニティ研究が示す“器”の条件

ブランドコミュニティは学術的に「ブランドに対する称賛者の間にある、構造化された社会関係に基づく、地理に依存しないコミュニティ」と定義されます。
示唆:コミュニティは“あると良い”ではなく、運営・規範・関係性を要する重い投資です。だからこそ、先にユニティ(私たち)を立て、後から器(コミュニティ)を拡張する順序が合理的です。


よくある誤用(注意)

  1. 「コミュニティを作ればユニティが生まれる」と思い込む
    参加導線だけ整えても、当事者ラベル/共通の物語/同期体験がないと“掲示板”で終わります。

  2. “私たちは家族”を乱用する(虚偽・誇張)
    ユニティは強い分、実態が伴わないと反発を生みます。AIでコピーを量産するときほど、根拠データ(本当に共有している属性)と運用ルールが必要です。

  3. 外集団を作って結束させる(短期は効くが長期で毀損)
    分断は一時的に行動を作れても、ブランドの信頼・採用・パートナーに副作用が出ます。


すぐ使える問い(Killer Question)

  1. 私たちは、顧客を“ユーザー”として扱っていないか? 「同じ側(one of us)」に入れるラベル(同業・同じ課題・同じ目標)がないと、機能説明は最後まで“他人事”になりやすい。

  2. ユニティを作るために、“共に行う体験”を設計できているか? 共同作業や同期(チャレンジ、共同投稿、共創)はラポールと当事者性を生み、広告より強い継続・紹介の理由になり得る。

  3. “私たち”を狭めて成果を出していないか? 敵や外集団を暗に作ると短期は伸びても分断を固定化する。長期の信頼を守るなら“私たち”を広げる設計が必要。

 

参考文献リスト

チャルディーニの著作(主要文献)

  1. Pre-Suasion: A Revolutionary Way to Influence and Persuade

  2. Influence, New and Expanded: The Psychology of Persuasion

チャルディーニの組織・公式情報

  1. Influence At Work – 7 Principles of Persuasion

  2. Influence At Work – About Our Company

  3. Influence At Work – LinkedIn

  4. Influence At Work – YouTube

Unityの原理に関する解説記事

  1. What is Unity, Cialdini’s 7th Principle? – Neuroscience Marketing

  2. Unity: Robert Cialdini’s New 7th Principle of Influence – Medium

  3. The gentle science of persuasion, part seven: Unity – ASU News

  4. Unity: Cialdini’s 7th Principle of Persuasion, Explained – YouTube

  5. How to Use the Persuasion Principle of “Unity” at Work – Axero Solutions

  6. The Power of Unity: Robert Cialdini Expands His Best Selling Book – Behavioral Grooves Podcast

チャルディーニの7原理全般に関する資料

  1. Cialdini’s 7 Principles of Persuasion: A Guide to Influence – Cognitigence

  2. Cialdini Principles: 7 Principles of Influence (+ Examples) – Gust De Backer

  3. The Psychology of Influencer Marketing with Cialdini’s Principles – Zion & Zion

  4. 7 Principles of Psychological Persuasion – Sprouts Learning Videos

  5. Influence by Robert B. Cialdini – Novagram Blog

企業事例:LEGO Ideas

  1. LEGO Ideas – How It Works

  2. LEGO Ideas – Rules & Guidelines

  3. LEGO Ideas – Blog (2025年レビュー情報)

  4. Lego Ideas – Wikipedia

  5. LEGO Ideas: How It Works, Fan Voting, and How to Submit – Toys N Bricks

企業事例:Nike Run Club

  1. Nike Run Club: Running into the future with community-driven fitness – Social.plus

  2. Nike Run Club – Official App

  3. Nike Run Club Gamification Examples – StriveCloud

  4. Community Decoded: 5 Ways Nike Wins With Community Marketing – Skeepers

  5. Nike Brand Community: Building Loyalty and Engagement – Arena

  6. How brands are leveraging the rapid rise of run clubs – Notice

  7. NIKE Run Club – The Bench

企業事例:Harley-Davidson H.O.G.

  1. Harley Owners Group (H.O.G.) – Harley-Davidson USA

  2. H.O.G. Chapters – Harley-Davidson USA

  3. Harley Owners Group – Wikipedia

  4. Harley Owners Group (H.O.G.): A Community United by Passion – Motorcycle Mat

心理学理論:社会的アイデンティティ理論

  1. Social Identity Theory In Psychology (Tajfel & Turner, 1979) – Simply Psychology

  2. Social identity theory – Wikipedia

  3. Tajfel & Turner (1979). Social Identity Theory – ResearchGate

  4. The Social Identity Theory of Intergroup Behavior – APA PsycNet

  5. Social identity and intergroup behaviour – Henri Tajfel (1974)

  6. Tajfel and Turner’s social identity theory – The Open University

  7. Social Identity Theory – ScienceDirect Topics

  8. Social Identity Theory: The Science of “Us vs. Them” – YouTube

  9. Social identity theory – EBSCO Research Starters

心理学理論:最小条件集団パラダイム

  1. Minimal group paradigm – Wikipedia

  2. Minimal Group Paradigm Definition – Psychology Glossary

  3. Minimal Group Paradigm Study experiments Henri Tajfel – Age of the Sage

  4. The origins of the minimal group paradigm – APA PsycNet

  5. Henri Tajfel and the “Minimal Group Paradigm” – YouTube

  6. The Minimal Group Paradigm – ABLConnect (Harvard)

  7. Minimal Group Procedures and Outcomes – Collabra: Psychology

  8. Key study: Tajfel (1970) Minimal group paradigm – 教育資料

  9. Creating the Minimal Group Paradigm – JoVE

  10. The Minimal Group Paradigm – Vocal Media

その他の関連情報源

  1. Reddit – What are the chances that a Lego Idea that achieves 10k…

  2. Reddit – Nike Run Club Running community

  3. Reddit – HOG Member Worth It?

  4. 検証対象の原記事

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