See-Think-Do-Care(STDC)

Marketing Frameworks

Summary

ファネル/購買行動モデルの中でも、「検索意図(intent)起点で設計する現代型ファネル」に位置づく枠組みです。

顧客を“いまの意図”で4群(See/Think/Do/Care)に分け、コンテンツ・広告・KPIを整列させるフレーム

KPIが部門や施策ごとにバラけ、認知〜購入〜LTVが一本の判断軸で語れないときに使います。


秀逸ポイント

See-Think-Do-Care(STDC)の強みは、従来の「認知→検討→購入」の直線ファネルよりも、“人の状態”ではなく“意図の濃淡”で分類する点にあります。結果として、上流の取り組みを「直接CVしないから無価値」と切り捨てる罠(ラストクリック偏重)を避け、上流は上流の勝ち筋KPIで評価できます。
またSTDCは、See/Think/Careで「心の中の想起(mental availability)」を最大化し、Doで「買いやすさ(ease-of-purchase)」を最大化する、という二系統の目的を明確に分けます。ここが曖昧だと、認知施策にCPAを求めたり、購入直前にブランド動画を当てたりして投資効率が崩れます。
AIマーケの文脈でも、LLMで“意図”を推定して配信・レコメンド・クリエイティブ生成を最適化しやすい一方、誤分類や過剰パーソナライズが信頼を毀損します。STDCは「どの意図に、何を、何で測るか」を先に決めるため、AI活用の暴走を抑える“ガードレール”にもなります。


提唱者・発表時期

提唱者は、Googleのマーケティング/アナリティクス領域で知られるAvinash Kaushik(アヴィナッシュ・コーシック)です。2013年に「See–Think–Do」を、のちに既存顧客領域を含む形で発展させ、用語も含めて「Care」へ整理しています。
学術側からも、STDCは「デジタルマーケティング向けに設計されたシンプルな意思決定ジャーニーモデルの一つ」として言及されており、Kaushikの2013/2015年の整理と、Google社内での利用に触れた文献もあります(。
なお、二次解説記事では「Googleモデル」等の呼称も見られますが、一次情報としてはKaushik本人の整理を起点に把握するのが安全です。


詳細説明

STDCは、カスタマージャーニーを“段階”として扱いつつ、運用上は「意図クラスター」として設計するのがコツです。人は必ずしも一直線に進まず、同じ人が「いまはSee(雑談)」「別の日はThink(比較)」「翌週はDo(購入)」と往復します。STDCはこの現実に合わせ、“その瞬間の意図”に最適化します。

4ステージの定義(実務的な解像度)

  • See(広い母集団):今すぐ買う意図はないが、カテゴリと接点を持ちうる人

    • 例:課題の気づき、トレンド探索、娯楽的接触

    • 典型アウトプット:短尺動画、啓発コンテンツ、ブランドの約束の提示

  • Think(検討の入口):カテゴリ内で「買うかもしれない」と考え始めた人

    • 例:比較軸の探索、用途・価格帯の当てはめ、評判確認

    • 典型アウトプット:比較表、選び方ガイド、ユースケース、FAQ

  • Do(行動・購入):具体的に購入/申込の意図が高い人

    • 例:指名検索、価格/在庫/納期、導入手順、申込障壁の除去

    • 典型アウトプット:LP、オファー、見積、トライアル、カート最適化

  • Care(購入後・継続):購入者/既存顧客(オンボーディング〜定着〜推奨)

    • 例:使い方、トラブル解消、アップセル、コミュニティ、ロイヤル化

    • 典型アウトプット:チュートリアル、活用Tips、サポート導線、CRM施策

「目的」を二系統に分ける(STDCが効く理由)

Think with Googleの整理では、See/Think/Care=想起(mental availability)の最大化、Do=買いやすさ(ease-of-purchase)の最大化と置きます。ここを分けると、KPI設計が一気にクリアになります。

真のナーチャリングの実現

See-Think-Do-Care(STDC)は、いわゆる「ナーチャリング(リード育成)」を便利な一言で片付けないための分解フレームです。ナーチャリングは本来、「見込み客に接触すること」でも「メールを配信すること」でもなく、相手の“いまの意図(intent)”を見極め、その意図に合う情報の深さ・導線・摩擦除去を設計し、意図が次に進んだかを測ることです。STDCは、この“意図の遷移設計”をSee(広い興味)/Think(検討の入口)/Do(行動)/Care(購入後)に整理し、施策・KPI・予算配分の説明責任を取り戻します。

特に現場で起きがちな失敗は、「全部をCVで裁く」か、逆に「育成だから」で成果定義を曖昧にする、の両極端です。STDCは、上流(See/Think)では想起・信頼・検討の前進を、下流(Do)では購入摩擦の除去と意思決定の後押しを、購入後(Care)では定着・継続・LTVを、それぞれ別の勝ち筋として評価できます。これにより、ファネル/カスタマージャーニーを“運用できる設計図”に変えられます。

BtoBで効き方が増す理由

BtoBでは「ナーチャリング」の曖昧さが致命傷になりやすい一方、STDCで分解すると打ち手が明確になります。

  • 購買が“委員会”で起きる:同じ企業でも、担当者・決裁者・利用部門で意図がズレます。STDCは「企業」ではなく「役割×意図」で設計しやすい。

  • Thinkが長く、段階的:比較検討は「製品比較」だけでなく、課題定義→要件定義→稟議ロジック(ROI/リスク/体制)へ進みます。Thinkを厚く設計する根拠になる。

  • Careが収益の中心:更新・アップセル・紹介はCareで決まります。BtoBほどCareを“サポート扱い”するとLTVが伸びません。

他モデルとの違い(使い分け)

モデル主な軸得意な用途注意点
STDC意図(intent)施策×KPI×予算の整列、ナーチャリング設計「人の属性」ではなく「状態」に付与
AIDA/AISAS心理段階コピー・訴求設計直線モデルとして固定しがち
ジャーニーマップ接点の時系列CX改善、体験設計作って満足し、KPIに落ちない

よくある誤用(警鐘)

  1. Do偏重:上流を刈り取り指標で裁き、需要が先細る(CAC悪化)。

  2. Thinkを薄くする:比較軸や不安の解消を飛ばし、商談・CVRが頭打ち。

  3. Care欠落:オンボ不足で解約率が上がり、獲得投資が無駄になる。

AIマーケへの“さりげない接続”

STDCは、AIの得意領域(意図推定、コンテンツ生成、配信最適化)と相性が良いです。たとえば、検索クエリ/閲覧ログ/会話ログをLLMで「See/Think/Do/Care」タグに分類し、**生成コンテンツのテンプレ(説明の深さ・比較表の有無・CTAの強度)**を切り替えられます。重要なのは、先に「そのタグで何を成功とするか(KPI)」を置くことです。これがないと、AIが最適化する指標がブレて局所最適(クリック最大化など)に陥ります。
SEO観点でも、STDCでキーワードを「情報探索(See)」「比較検討(Think)」「指名・取引(Do)」にクラスタリングすると、記事の意図整合(GEO)と内部リンク設計がやりやすく、AIO等の運用でも管理しやすくなります。
生成AIや予測モデルは、行動ログや検索語から意図推定(See/Think/Do/Careの推定)を支援できます。ただし、AIは放っておくとクリック最大化など局所最適に寄りがちです。STDCで先に「その意図で何を成功とするか(KPI)」を定義し、意図別テンプレ(比較表の有無、根拠提示の深さ、CTA強度)を用意すると、AI活用が“説明可能な運用”になります。


具体例/活用案

公開事例(一次情報ではない点に注意)

  • IKEAのYouTube運用(紹介記事):IKEAのYouTubeチャンネルを、See/Think/Do/Careそれぞれの意図に合わせた動画タイプで構成している、というケーススタディが公開されています(第三者による解説)。動画の役割を「着想(See)」「具体ノウハウ(Think)」「試したくなる(Do)」「継続利用(Care)」に切る発想は、コンテンツ棚卸しの実例として参考になります。

  • P.Louise(デジタルエージェンシーの事例):成長の“型”としてSTDCを採用し、上流で需要形成→中流で意図育成→下流で収益化、さらに長期価値(Care)までを一つの投資設計に乗せた、とする支援事例が公開されています(当事者によるレポート)。

実務への落とし込み(テンプレ)

  1. 自社カテゴリで“Think”を定義:ここが曖昧だと、SeeとDoしか残りません(例:比較軸/用途/導入条件が言語化できる状態=Think)。

  2. 触っているデータを意図で再ラベル:検索語、記事閲覧、資料DL、価格ページ到達、サポート閲覧などをSTDCに分類。

  3. ステージ別KPIツリー

    • See:リーチより「想起」寄り(例:検索シェア、指名検索の伸び、動画の完視聴など)

    • Think:比較検討の“進み” (例:比較記事→料金ページ遷移、複数回訪問、資料DLの質)

    • Do:摩擦除去(例:CVR、フォーム完了率、カート離脱、ROAS)

    • Care:継続価値(例:リピート率、解約率、オンボ完了、LTV)

  4. 施策の棚卸しを“目的で再配置”:今ある記事・広告・メールを、ステージ別に並べ替え、空白(特にCare)を可視化。

  5. 実験設計:Think→Doの移送率、Care→再購買の導線など、ステージ間の“接続KPI”でA/Bテストします(AI生成クリエイティブも、接続KPIで評価すると暴走しにくい)。

よくある誤用(注意)

  • 「Doの数値だけで全施策を裁く」:See/Thinkの価値をゼロにし、需要の先細りを招きます。

  • Careを“サポート部門の仕事”に押し込める:LTVが伸びず、獲得CPAだけが上がります。

  • STDCを固定ファネルとして扱う:現実は往復します。タグは“人”ではなく“状態”に付けるのが安全です。


BtoBで気づきが増える理由(強調ポイント)

BtoBは特に「ナーチャリング」が魔法の言葉になりやすい一方で、実態は複雑です。STDCを当てると、曖昧さの正体が分解されます。

1) 「意図」だけでなく「購買単位」がある

BtoBは個人の意図に加えて、**購買委員会(複数の意思決定者)**が存在します。

  • See/Think/Doは「顧客企業」ではなく「担当者・役割」単位でズレる

  • だから“ナーチャリング”は実質、「役割別に意図を進める設計」になります

2) Thinkが長い。しかも“比較軸”が段階的に変わる

BtoBのThinkは「製品比較」だけでなく、

  • 問題定義(Why now)

  • 要件定義(Must/Should)

  • 稟議ロジック(費用対効果、リスク、体制)
    に分解できます。ここを一括りにすると施策が散ります。STDCはThinkを厚く設計する口実になります。

3) Careが売上の中心(更新・拡張・紹介)

BtoBは「契約後」が本番です。Careは“サポート”ではなく、

  • オンボーディング完了

  • 利用定着(アクティブ率)

  • 更新(解約率低下)

  • 拡張(アップセル)

  • 推奨(紹介)
    まで含む収益装置です。「ナーチャリング=獲得前」と捉えると、ここが落ちます。


BtoB版のSTDC設計テンプレ(超実務)

「ナーチャリング」を分解するための最小セットです。

ステージ×目的×コンテンツ×KPI(例)

  • See:課題の存在を“自分ごと化”

    • コンテンツ:業界トレンド、失敗パターン、診断ツール

    • KPI:指名検索増、初回→再訪、課題系記事の滞在・完読

  • Think:比較軸の形成/要件の言語化

    • コンテンツ:比較表、導入ステップ、セキュリティ/法務FAQ、稟議資料テンプレ

    • KPI:資料DLの質、料金/機能ページ回遊、ウェビナー参加→商談移送率

  • Do:稟議と導入摩擦の除去

    • コンテンツ:PoC設計、ROI計算、提案書ひな形、導入体制例

    • KPI:商談化率、PoC→本契約、受注リードタイム短縮

  • Care:定着→更新→拡張

    • コンテンツ:オンボ教材、活用ユースケース、社内展開キット、ユーザー会

    • KPI:オンボ完了、アクティブ率、更新率、拡張率、紹介件数

この項目を押さえていくと、「ナーチャリング」の言葉で逃げずに、やることが具体化します。

 


すぐ使える問い(Killer Question)

  1. いまの予算配分は「Doの取り合い(刈り取り最適)」になっていないか?
     上流の需要形成が痩せると、短期ROASは良く見えても中期で獲得単価が跳ねます。

  2. “Think”の定義は、顧客の比較軸(不安・制約・導入条件)まで含めて言語化できているか?
     Thinkが薄い組織は、説明不足のままDoに押し込み、CVR改善が頭打ちになります。

  3. CareのKPIは「満足」ではなく“次の行動(定着・再購買・推奨)”として設計されているか?
     Careが曖昧だと、サポート閲覧や開封率だけが増え、LTVに繋がりません。

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