Summary
「ファネル/購買行動」カテゴリの中では、SNS上のUGC(User Generated Content:SNSやインターネット上でユーザーが自ら投稿する口コミやレビューのこと)を起点に購買が循環する“フライホイール型”の代表例がULSSASです。
一言で言うと、「『UGCを起点に、SNS検索と指名検索を経て購買と拡散が自走するモデル』」です。
いつ使うか:広告CPAが上がり、公式アカウント運用だけでは伸びづらい局面で、「UGC→検索→購買→再UGC」の循環を設計したいときに使います。
秀逸ポイント
ULSSASの秀逸さは、購買行動を“直線”ではなく循環(フライホイール)として捉え、「Searchが2種類ある」点を明示したことです。SNSで見かけた投稿に「いいね」した後、人はまずSNS内(ハッシュタグ/キーワード/保存)で追加情報を探し(Search1)、その後に検索エンジンで店舗・EC・評判など“意思決定に必要な確証”を取りにいきます(Search2)。
つまり、ULSSASは「SNSでバズれば売れる」という雑な話ではなく、UGCの拡散→SNS検索→指名検索→購買→再投稿という“実務で起きている分岐”をモデル化しています。SNS運用、SEO、EC、店頭導線を分断せず一つの循環として設計できるのが、現場に刺さるポイントです。
提唱者・発表時期
ULSSASは、SNSマーケティング支援を行う株式会社ホットリンクが提唱した購買行動モデルです。
ホットリンクの解説記事は2021年1月25日公開(その後更新)と明記されており、社内のメモ(2019年)をもとに整理した旨も記載があります。
学術理論としての“定説”というより、実務(特にSNS上のUGCと検索行動)を説明するために体系化されたフレームと捉えるのが適切です。
詳細説明
ULSSASは、次の6段階で構成されます。ポイントは、起点が広告ではなくUGCであり、さらにSearchが「SNS内検索」と「検索エンジン検索」に分かれている点です。
U(UGC):ユーザー投稿(レビュー、写真、体験談、比較、使い方)を見て認知
L(Like):いいね・保存・リポスト等の反応が集まり露出が増える
S(Search1):SNS内で追加情報を探索(ハッシュタグ検索、キーワード検索、コメント欄、類似投稿)
S(Search2):検索エンジンで“確証”と“買い場”を探索(指名検索、店舗、価格、比較、評判)
A(Action):購入/申込/来店
S(Spread):購入体験が投稿され、次のUGCになる(循環が回る)
なぜ今ULSSASが効くのか(背景)
背景の一つがSNS検索の習慣化です。調査によっては「全年代の72.5%が毎日SNS検索を利用」といった結果も報告されています(出典:スマートシェアの調査をPRとして公開)。
この状況では、企業が“検索広告やSEOだけ”を最適化しても、そもそも認知の入口でUGCに負けることが起きます。逆に言えば、UGCと検索(SNS検索+指名検索)を一体で設計できるブランドは、循環が回り始めると広告依存を下げながら伸びやすい、というのがULSSASの主張です。
関連モデルとの違い(比較表)
| モデル | 起点(入口) | 構造 | “検索”の扱い | 強い領域 |
|---|---|---|---|---|
| AIDMA / AISAS | 広告・認知接触 | ファネル型 | 検索は1種類(AISAS) | マス~Webの基本整理 |
| SIPS | 共感・参加(SNS文脈) | 循環型 | 検索より“共感→確認”重視 | コミュニティ・参加型 |
| ULSSAS | UGC(ユーザー投稿) | フライホイール型 | SNS内検索+検索エンジンの2段階 | UGC×SNS×指名検索×購買の統合 |
ULSSASは「SNS運用の話」に見えがちですが、実務的にはむしろSearch2(指名検索・買い場探索)の設計が肝です。SNSで好意的に拡散しても、検索結果で公式情報や比較・FAQ・在庫/店舗が弱いとActionに落ちません。ここが“ソーシャルだけやって失速する”典型的な落とし穴です。
AIマーケティングへの、さりげない接続
ULSSASは「UGCを起点に循環を回す」ため、運用上はUGC理解と改善の速度が勝負になります。ここでAIが効きます。例えば、
生成AI/LLMでUGCを論点別に自動要約し、「購入理由」「不満」「比較軸」を抽出
SNS検索(Search1)で使われる語彙を学習し、ハッシュタグ/キーワード設計を更新
Search2の検索意図を踏まえ、FAQ・比較表・レビュー構造化などをSEO/GEO(生成AI検索)向けに整備
といった形で、フライホイールの回転数を上げやすくなります(AIは“投稿を作る道具”というより“学習と最適化の道具”として効く、という整理です)。
生成AIは投稿を量産するより、コメントやレビューを要約→FAQ候補に整形し、Search2 LPの「不安解消」を高速で更新する用途が堅いです。一次情報で裏取りしつつ、毎週アップデートできる体制を作ると、Search1→Search2の接続が途切れにくくなります。
具体例/活用案
1) 事例(公開情報ベース)
スタジオジブリ『君たちはどう生きるか』:プロモーション露出が限定的だった一方で、鑑賞体験の投稿がUGCとして広がり、検索・話題化が進んだ事例として整理されています(興収などの数値は外部報道に基づくと紹介)。
花王「ビオレUV」×TikTok:TikTok上の投稿(UGC)を起点に認知・検索・購買へつなげた成功事例として紹介されています。
※上記はいずれも、ULSSASの“説明モデル”として後から当てはめて解説されている側面があります。したがって「ULSSASを使ったから成功した」と因果を断定するのではなく、「成功の中にULSSAS的な循環が観察できる」と扱うのが安全です。
2) 活用案(実務で使える設計テンプレ)
ULSSASを「回す」ために、施策を6工程に対応させます。
U(UGC)を増やす:投稿したくなる“体験単位”を設計(限定体験、比較しやすい特徴、使い方の型)
L(Like)を取りにいく:公式は“作品”より“反応設計”(保存価値、コメント誘発、引用されやすい表現)
Search1対策:SNS内検索で見つかる“検索語”を定義(ハッシュタグ、通称、悩み語、比較語)
Search2対策:指名検索の着地先を作る(公式LP、FAQ、価格、取扱店、比較表、レビューの構造化)
Action導線:EC/店舗/予約の摩擦を除去(在庫、配送、最短導線、返品不安の解消)
Spread促進:購入後の投稿トリガー(同梱物、体験共有の動機、UGC再掲の許諾設計)
具体例/活用案(Search1→Search2を“切らさず”に繋ぐ型)
ULSSASのSearch1→Search2で成果が出るブランドは、SNSで盛り上がった熱量を「検索エンジンで確信に変える受け皿(LP)」で回収しています。特にSearch2は「口コミ確認」「どこで買える」「使い方」「比較」「正規性・保証」といった“不安解消と買い場確定”が中心になるため、**LPはリンク集ではなく「30秒で納得→そのまま購入」**の設計が効きます。広告や無料リスティングの訴求とLPの内容がズレると離脱しやすい点も要注意です。
事例パターン1:SNSの“通称・俗称”をLPで回収して断絶を防ぐ
SNSでは正式名称より通称で検索・会話が進みます。例としてビオレUVでは、通称を含む呼ばれ方が流通しているため、Search2側(Google等)でも通称をH2/H3やFAQに自然に含めるだけで取りこぼしが減ります。
実装のコツ:例えば、「正式名=通称で同一商品」を明記し、FAQにSNSの言い回し(“落ちる?/ベタつく?/どれが良い?”等)をそのまま採用。
事例パターン2:“買い場の分岐”をLPで受けて機会損失を減らす
Search2では「どこで買える」が最頻出になりがちです。メディキュットの事例では、遷移先を1つに固定せず、Amazon・楽天など複数の購入先ボタンをLP上に並べ、商品理解も載せたと説明されています。
実装のコツ:購入ボタンの上に「要点3つ(誰に/何が/なぜ)」+「低評価で出がちな懸念への回答」を置き、“迷い”を残さない。
事例パターン3:バズが店頭に波及する商材は「Where to buy」を最上段に置く
Little MoonsはTikTok起点で需要が高まったケースとして語られています。
このタイプ(FMCG/店頭流通/限定品)は、Search2の最初の目的が「取扱店・在庫」になりやすいので、LPの上部に取扱チャネル別(EC/コンビニ/スーパー等)の導線を配置し、在庫変動の注記も添えます。
Search2の受け皿LP「最小構成」テンプレ
下記は私の実務上の推奨ですが参考になると思います。
FV(3秒):通称込みの一言ベネフィット+用途(誰の何を解決?)
30秒で確信:特徴3点/根拠(仕様・成分・データ等の事実)/よくある不安2点への回答
買い場確定:購入先ボタン(複線化)+店頭導線(あるなら)
比較と選び方:バリエーション比較表(用途別おすすめ)
FAQ(SNS語彙):Search1で出る言い回しをそのまま見出し化
信頼ブロック:正規性・保証・返品・配送(不安の火種を先に潰す)
(可能なら)構造化データ:Product/Review等を実装し検索結果での情報提示を強化
よくある誤用(注意)
誤用1:SNS運用=ULSSASだと思い込む
UGCが回る前提を作らず、公式投稿だけを増やしても循環は回りません。ULSSASの起点はUGCであり、公式は“UGCが出る条件”を整える役です。誤用2:Search2を軽視する
SNSで盛り上がっても、検索で出てくる情報が弱いと購買に落ちません。ULSSASはSNSだけで完結しないモデルです。誤用3:UGCを“作り物”で埋める
ステルスマーケティング的に見える投稿は逆回転(炎上・不信)を生みます。UGCは増えますが、Like以降が崩れ、ブランド毀損リスクが上がります(不確実性があるため断定は避けますが、実務上の典型的リスクです)。
すぐ使える問い(Killer Question)
UGCが自然発生しない原因は、商品の価値ではなく「投稿したくなる体験単位」が設計されていないことではないか?—循環の入口(U)が弱いと、以降の最適化が無効になります。
Search1で使われている“生活者の検索語(悩み語・比較語・通称)”を、私たちは把握し、公式コンテンツと接続できているか?—SNS検索で見つからないと検討土俵に乗りません。
指名検索(Search2)した人が迷わず買える“確証と買い場”を、検索結果の上位で提供できているか?—SNSで作った熱量をActionに落とせるかがROIを決めます。
参考文献
ULSSASの概念について
– 株式会社ホットリンク「SNS時代のマーケティングフレームワーク、『ULSSAS(ウルサス)』とは」(2021年1月25日公開、2024年7月4日更新) https://www.hottolink.co.jp/column/20210125_108238/
– 株式会社ホットリンク「ULSSAS(ウルサス)とは|メソッド」 https://www.hottolink.co.jp/service/method/ulssas/
SNS検索利用データ
– スマートシェア株式会社「全年代の70%が毎日SNS検索を利用。購買活動へ与える影響とは?」(2023年6月1日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000145.000019448.html
成功事例
– TikTok for Business「TikTok売れでシェア1位に 花王ビオレUVのTikTok活用戦略」(2023年8月29日)
– TikTok for Business「メディキュットがフルファネル戦略でTikTok売れ」(2024年12月18日) https://ads.tiktok.com/business/ja/blog/mediqtto-casestudy-nikkeixtrend
– TikTok for Business「Little Moons | TikTok for Business Case Study」 https://ads.tiktok.com/business/en-GB/inspiration/little-moons-921
– The Telegraph「Little Moons TikTok trend pushes supermarkets to stock up on ice cream」(2021年2月4日)

関連記事
– HubSpot Japan「ULSSAS(ウルサス)とは?成功事例やマーケティングでの活用方法」(2025年5月30日)

– Meltwater Japan「ULSSAS(ウルサス)とは?活用ポイントと成功事例を解説」(2025年2月7日) https://www.meltwater.com/jp/blog/ulssas


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