Summary
「用語」:市場・競争の診断において、イノベーションの担い手が“既存大企業(インカンベント)側”に寄りやすい産業構造を捉える視点です。
一言で言うと、「競争は“創造的蓄積”として進み、革新は既存企業の継続的な能力の積み上げで起こる」。
使いどころ:参入者の脅威よりも、インカンベントの“累積優位(R&D・特許・規格・補完資産)”が勝敗を決める局面の見立てに使います。
秀逸ポイント
Mark IIの秀逸さは、「競争は激しい/集中している」といった静的な市場把握を超えて、“なぜ勝ち手が固定化しやすいのか”を、技術・学習・専有可能性(appropriability)・累積性(cumulativeness)で説明できる点にあります。
Mark Iが「新規参入の実験速度」を主語にしやすいのに対し、Mark IIはインカンベントが既存の技術軌道(trajectory)に沿って能力を統合・強化し続けることで、革新の主役であり続けるという世界観です。
実務上の効用は明確で、競合分析の結論が「差別化ポイント」ではなく、“どの蓄積資産を押さえたプレイヤーが、次の波も取り込むか”に変わります。すると、打ち手も獲得中心から、規格・流通・既存顧客基盤・データ・補完財(エコシステム)の設計へと重心が移ります。
提唱者・発表時期
提唱者は経済学者の ヨーゼフ・A・シュンペーター(Joseph A. Schumpeter)です。
ただし「Mark I / Mark II」というラベルは、シュンペーター自身の章見出しというより、後続研究が“初期(起業家中心)”と“後期(大企業中心)”の見方を整理するために用いた分類として定着したものです。
後期の見方(=Mark II側)は、一般に『Capitalism, Socialism and Democracy』(初版1942年。英語圏では1943年版の流通・版を含む)が代表的参照先として挙げられます。
その後、Malerba & Orsenigo、Breschi らの研究が、産業ごとのイノベーションの型を「創造的破壊(Mark I)」と「創造的蓄積(Mark II)」として操作可能な形に落とし込みました。
詳細説明
1) 何を“仮説”と言っているのか(市場構造とイノベーションの論点)
シュンペーター仮説(Mark II)を、マーケティング実務で誤解なく使う鍵は、「大企業が強い」ではなく、“革新が累積的に起き、かつ専有されやすい産業条件では、革新の担い手がインカンベントに偏る”という構造仮説として読むことです。
このとき重要なのは、競争の激しさ(プレイヤー数)よりも、技術レジーム(技術機会、専有可能性、累積性、知識基盤の性質)が、参入・模倣・学習の難易度を決める、という整理です。
Mark IIはとくに、参入者にとって“技術的参入障壁”が高く、革新活動が集中し、イノベーターの顔ぶれが安定しやすいという特徴で語られます。
2) Mark I(創造的破壊)とMark II(創造的蓄積)
後続研究では、Mark Iを「widening(新規イノベーターが増える)」、Mark IIを「deepening(既存イノベーターが深掘りする)」として捉え、特許集中度や新規イノベーター比率、イノベーター順位の安定性などで観測しようとします。
Mark II(deepening)では、革新はインカンベントが**継続的に技術能力を積み上げる“創造的蓄積”**として進みます。結果として、革新活動は上位企業に集中し、参入者の“初回の革新”が相対的に起きにくくなります。
ここでのポイントは、「革新=一発の発明」ではなく、改良・統合・規格化・補完資産の強化を通じて、競争優位が再生産されることです(マーケで言えば、機能差よりも“採用のしやすさ/信頼/互換性/運用ノウハウ”が武器になります)。
3) ひと目で分かる比較表(実務での“診断項目”)
| 観点 | Mark I(創造的破壊) | Mark II(創造的蓄積) |
|---|---|---|
| 主役 | 新規参入者・起業家・新興企業 | 既存大企業・確立プレイヤー |
| 参入障壁 | 低め(試せる) | 高め(技術・規制・標準・資本・補完資産) |
| 競争の形 | 入れ替わりが起きやすい | 序列が固定化しやすい |
| 革新の性質 | 新規性の高い置換が起点になりやすい | 改良・統合・スケール化で性能を積む |
| 観測のヒント | 新規イノベーター比率が高い | 上位集中・順位安定・新規比率が低い |
上の表は、Mark IIが「参入障壁が高い」「革新活動が集中する」「イノベーターの集団が安定する」という整理(routinized / deepening)に対応しています。
加えて、Mark IIを“計測寄り”に見るなら、次のような指標が典型です(研究では特許データ等で扱われます):
上位4社の特許集中度(CR4)が高い
イノベーター順位(誰が多く出願するか)が安定
新規出願企業(一定期間で初めて出願する企業)の比率が低い
4) 「イノベーションのジレンマ」との違い
Mark II(シュンペーター仮説)は、産業の“競争レジーム”を説明する枠組みです。つまり「参入障壁が高い」「知識が累積的」「専有可能性が高い」などの条件下では、イノベーションが既存企業の“創造的蓄積(creative accumulation)”として進みやすく、結果として上位企業に革新活動が集中し、顔ぶれが安定しやすい――というマクロなパターンを扱います。
一方「イノベーションのジレンマ(Innovator’s Dilemma)」(Christensen, C. M. (1997))は、既存企業が合理的に“正しい経営”をしているのに、ディスラプティブ・イノベーションに負けるという、企業行動・組織設計(資源配分・評価指標・顧客の声の扱い)の問題を扱います。ディスラプティブは典型的に、当初は低性能・低価格で“下位市場や新市場”から入り、改善しながら主流市場を侵食していく、というプロセスとして定義されます。
ここが重要で、Mark IIだからといって「既存企業は安泰」ではありません。Mark IIは「平均的に蓄積が効きやすい」構造を示すだけで、(規格転換・ビジネスモデル転換・評価軸のズレが起きると)ジレンマが発火して、既存企業が取り逃がす余地は残ります。逆に、ジレンマを語るだけだと“産業条件(参入障壁・累積性・専有可能性)”の診断が抜け落ち、本当はMark IIで蓄積勝負をすべき局面で「とにかくディスラプトに備えよ」という誤配分に陥りがちです。
Mark II と イノベーションのジレンマ:違いの比較表
| 観点 | シュンペーター仮説(Mark II) | イノベーションのジレンマ |
|---|---|---|
| 何を説明する? | 産業におけるイノベーションの構造的パターン(創造的蓄積) | 既存企業がディスラプションに負ける行動・組織のメカニズム |
| 分析レベル | 産業・技術レジーム(参入障壁、累積性、専有可能性) | 企業内の資源配分、評価指標、顧客要求への最適化 |
| 主役 | 既存企業(インカンベント)が革新を継続的に深掘り | 新規参入者が当初は周辺から入り、改善して主流へ(ディスラプティブ) |
| 典型シグナル | 上位集中・順位安定・新規イノベーター比率が低い(deepening) | 主流顧客の要求に合わせた“持続的改善”が過剰最適化になり、周辺の波を取り逃がす |
| 実務の焦点 | 蓄積装置(規格、補完資産、運用学習、データ、統合)をどう強化するか | 別組織・別KPIで新市場/低位市場の学習を回す(既存の評価軸から切り離す) |
| よくある誤用 | 「大企業が強い=安全」と短絡する | 「何でもディスラプション」と呼び、産業条件の診断を省略する |
使い分け(実務での結論)
市場・競争の診断としてはまずMark IIで、「勝敗が“蓄積(統合・運用・規格)”で決まる構造か」を判定する。
そのうえで、周辺から入って評価軸をずらす動きが見えたら、ジレンマのレンズで「別KPI・別組織で学習を回せるか」を問う。
5) Mark II産業でも“ジレンマ”は起きる(失敗例/成功例)
Mark IIは「創造的蓄積(累積優位が効きやすい)」という産業の型ですが、それでも**評価軸の転換(新市場・低位市場の立ち上がり、エコシステムの主戦場化)**が起きると、既存企業はイノベーションのジレンマに陥り得ます。
ここは「Mark II=既存が安泰」という誤読を防ぐ重要ポイントです。
Mark II産業でジレンマに陥った例
コダック(フィルム/写真産業)
コダックは1975年に社内でデジタルカメラのプロトタイプ開発があったことが知られています。
一方で、フィルム中心の収益モデルからデジタルへの移行が遅れ、2012年に米国でChapter 11(連邦破産法11条)を申請しました。
“既存顧客(高品質・既存利益)への最適化”が、別評価軸(即時共有・低コスト・利便性)の波を取り逃がすという、ジレンマの典型として語られます。ノキア(携帯電話産業)
ノキアはフィーチャーフォン時代に強い地位を築きましたが、スマートフォンの台頭以降、OS/開発体制・エコシステム対応などで苦戦し、2007年以降に競争環境が急変する中で対応が後手に回った、と複数の研究で整理されています。
ここでも本質は「技術」単体より、アプリ/プラットフォーム(補完資産)へ主戦場が移った点で、Mark II的な蓄積(既存の最適化)が別評価軸に対して不利に働いた、という読みが可能です。
Mark II産業で成功した例(“蓄積”を勝ち筋にした例)
Intel(半導体)
Intelは長年、製造プロセスとマイクロアーキテクチャの更新を一定の開発リズムで回す「tick-tock」型の運用を掲げ、プロセス技術と設計の改善を2007年から2016年まで実施した事例として参照されます。
これはMark IIの要諦である “継続投資と累積改善(deepening)”を、組織の型に埋め込む例として扱えます(※近年の製造競争の難化など、時期によって状況が変わる点は留意)。トヨタ(自動車)
トヨタ生産方式(TPS)は「自働化(jidoka)」と「ジャストインタイム(Just-in-Time)」を柱とし、ムダの排除と継続的改善(改善活動)を通じて品質と生産性を高める考え方として、同社が公式に説明しています。
Mark II文脈では、これは**品質・工程能力・人材育成・現場問題解決の“蓄積資産”**を競争優位に転換し続ける代表例として位置づけられます。
ひと目で分かる整理表(Mark II × ジレンマの“勝敗分岐”)
| 企業 | Mark II的に効いていた蓄積 | 評価軸が動いたポイント(ジレンマの火種) | 結果(一般に知られる範囲) | 実務への教訓 |
|---|---|---|---|---|
| Kodak | フィルム/現像を中核にした収益構造・ブランド | デジタル化で「利便性・共有・即時性」へ重心移動 | 2012年にChapter 11申請 | “別評価軸”の伸びは、既存KPIから切り離して学習する |
| Nokia | 端末・OS・組織最適化(当時の主戦場) | スマホ化で「アプリ/エコシステム」へ主戦場移動 | 2007年以降に競争環境変化、対応が遅れたと整理 | 補完資産(開発者・プラットフォーム)を競争軸に入れる |
| Intel | 製造プロセス×設計の改善リズム(tick-tock等) | 微細化難化などで“蓄積の回し方”が重要に | 継続投資・改善の型として参照される | 蓄積装置(投資・工程・設計運用)を経営の中核に置く |
| Toyota | TPS(jidoka/JIT)と改善の蓄積 | 市場変動があっても“現場学習”を継続 | TPSを軸にした継続改善を公式に説明 | 品質・運用・人材の蓄積を、価値(顧客体験)に直 |
6) AIマーケティングへの“さりげない接続”
AIマーケの競争がMark II的に見える典型は、「モデルそのもの」より「運用データ・統合・ガバナンス・継続改善(MLOps)」が差を作り、しかもそれが累積していく局面です。
たとえば、CDP/MA/広告・CRMの結合、顧客ID統合、データ品質、学習→配信→効果測定のループが回り始めると、参入者が“同じことを再現”する難易度は上がります。これは、専有可能性と累積性が強いほどMark II(deepening)に寄る、という整理と整合します。
逆に、生成AIのテンプレ運用や単機能ツールの乱立はMark I寄りになりやすい。領域ごとにMark I/IIが混在する前提で、KPI(短期獲得か、学習資産の蓄積か)を揃えるのが実務上の要点です。
今後の競争としては、見た目は「生成AIの精度」や「新機能の多さ」に見えますが、実務の勝敗を分けるのはむしろ “運用として回るか” です。ここはMark II(創造的蓄積)に寄りやすい領域で、**データ資産・統合・ガバナンス・継続改善(MLOps/LLMOps的な運用能力)**が累積し、後発が同じ状態を再現しにくくなります。
一方で、同じAIマーケ領域でも “イノベーションのジレンマ” が発火する典型があります。ポイントは、「周辺用途(低リスク・低単価・小粒)」として始まった生成AI活用が、いつの間にか 主流業務(高単価・高リスク・基幹プロセス)に侵食し、評価軸が切り替わることです。
周辺用途 → 主流業務に侵食する“よくある流れ”(仮説)
生成AIは最初、企業内ではこういう「周辺」から入ることが多いです。
クリエイティブ案のたたき台、広告文の下書き(低リスク)
FAQ/チャット対応の草案、社内ナレッジ検索(限定スコープ)
レポート要約、会議メモ整理、競合情報の整理(作業支援)
しかし運用が進むと、次のように主流業務へ入ってきます。
制作→配信→検証の一連をAIが支援(制作だけでなく“運用”へ)
CRMのセグメント設計やパーソナライズ文生成が日次で回り始める
広告運用・入札/配分・LP改善の意思決定にAIが深く関与する
この“侵食”は、既存組織にとってジレンマになり得ます。なぜなら、周辺用途は当初「収益インパクトが小さい」「品質が粗い」「ガバナンス不安」という理由で、既存KPIや審査基準に合わず、合理的に後回しにされやすいからです。ところが、ツールや運用の成熟で“十分に使える”になった瞬間、主戦場が切り替わり、追いつくのが急に難しくなります。
評価軸が「精度」から「運用・安全性・統合」へ切り替わる
AIマーケの現場では、評価軸が次のように移ります(これがMark II×ジレンマを同時に生みます)。
初期:精度/生成品質/速度/安さ/目新しさ
次段:ブランドセーフティ/法務・権利/個人情報・同意/監査可能性
定着:統合(CDP/MA/CRM/広告)/運用SLA/再現性/改善サイクル
競争優位:データの蓄積と学習、プロンプト/ルール/評価基盤、組織の運用能力
Mark II的には、この「定着」以降が強烈で、統合とガバナンスと運用ループを先に回し切った側が、後からの模倣を難しくします。
一方ジレンマ的には、既存側が「主流顧客の要求(品質・安全・ROI)に最適化」するほど、周辺で育つ新しい評価軸の波(新市場/低位市場)を取り込みにくくなります。
Mark IIの“蓄積資産”と、ジレンマの“火種”の対応表
| 論点 | Mark II的に効く“蓄積資産” | ジレンマの火種(見落としやすい) |
|---|---|---|
| データ | ID統合、同意管理、データ品質、特徴量/セグメントの運用品質 | 周辺用途の学習データが“主流スタック外”に溜まり、後で統合できない |
| ガバナンス | 権利・個人情報・ブランドセーフティのルール化、監査ログ | ルールが厳しすぎて“試す場”が消え、周辺の伸びを学習できない |
| 統合 | CDP/MA/CRM/広告の接続、配信と計測の自動化 | 統合を重視しすぎて、軽量ツールの実験が遅れ、侵食に気づけない |
| 運用 | 評価指標(品質/リスク/再現性)の整備、改善サイクル | ROI中心KPIだけで判断し、低位市場の兆候を“採算未達”で切ってしまう |
実務の打ち手(Mark IIで勝ちながら、ジレンマを回避する)
Mark IIの強みは捨てずに、ジレンマを避けるには「二本立て」が有効です。
主流(コア)と探索(エッジ)を分離する
同じKPI・同じ審査基準に載せない。探索は“学習”をKPI化する。探索の“安全な砂場”を用意する
小さく始め、ログ・権限・データ範囲を限定して高速に回す。評価指標をROIだけにしない
例:Time-to-Value、運用SLA、事故率、監査対応時間、同意反映リードタイムなど。周辺用途の成功を、主流スタックに接続する設計を先に作る
最初から統合しない。だが「統合できる前提(ID、ログ、権限)」は持っておく。“評価軸転換”の兆候を監視する
周辺で採用が増えたら、既存KPIの外側にある価値(速度・自己完結・新しい体験)を見に行く。
具体例/活用案
1) Mark IIが“強い”産業の見取り図(参入障壁×累積の典型)
研究では、Mark II型は「参入障壁が高く、革新活動が集中し、イノベーター集団が安定する」産業で観測されやすいとされます。
具体的な“産業カテゴリ”として、たとえばある実証研究では、自動車(motor vehicles)、通信(telecommunication)、computing and software などをMark II側に分類して扱っています(分類方法や国・期間で揺れうる点には注意が必要です)。
マーケ施策に翻訳すると、ここでは「尖った新機能」より、互換性・規格・信頼・供給能力・導入容易性が勝ち筋に直結し、さらにそれが次の革新を呼ぶ(採用が増える→学習が進む→改善が進む)という循環が起きやすい、という見立てになります。
2) “同じ産業でもサブ領域で型が違う”を前提にする
Mark IIは「産業まるごとで一括診断」すると外しやすい概念です。Fontana らが整理するように、Mark I/IIは国よりも**技術(technology-specific)**に依存しやすい、という示唆があります。
実務では、カテゴリーではなく、
技術要素(標準・品質保証・安全性・規制)
補完資産(チャネル、データ、運用、サプライチェーン)
顧客ジョブ(導入の難しさ/継続運用の重さ)
で分解し、「ここはMark II(蓄積勝負)」「ここはMark I(実験勝負)」を切り分けると、競争分析の精度が上がります。
3) 施策への落とし込み(Strategy & Market Diagnosisとして)
Mark II的市場を前提にするなら、打ち手は「獲得」よりも “蓄積装置”の設計が中心になります。例:
規格・互換性・エコシステム:補完財・パートナー・APIなど「周辺」を厚くして参入障壁を上げる
継続改善の仕組み:改善が“個人の頑張り”ではなく、プロセスとして回る状態を作る(品質、運用、学習)
ロックインではなく“スイッチング摩擦の最適化”:顧客が離れない理由を、契約縛りよりも運用価値で作る
M&A/提携の狙いの明確化:技術を買うのではなく、**蓄積の穴(データ、販路、規制対応、実装力)**を埋める
この発想は、Mark IIが「集中・安定・累積」で特徴づけられるという整理と整合します。
4) 誤用の典型(注意喚起)
誤用①:「Mark II=大企業が常に正しい/必ず勝つ」
Mark IIは“傾向の型”であり、技術機会・専有可能性・累積性などの条件が変われば、型も揺れます。誤用②:市場集中=Mark II と短絡する
集中は結果であって原因ではありません。Mark II診断では、集中に至るメカニズム(累積・専有・参入障壁)まで確認が必要です。誤用③:「破壊(Mark I)対策=新機能追加」だけに寄せる
Mark II側では、機能差よりも“導入・運用・互換・信頼”が勝ち筋になりやすい。打ち手の主戦場を取り違えると、投資が空回りします。
すぐ使える問い(Killer Question)
この市場で“勝ちが固定化する理由”は何か(規制・標準・補完資産・データ・運用学習)?
理由:固定化の源泉が分かれば、機能差ではなく“蓄積装置”へ投資配分を寄せられる(Mark IIの戦い方が決まる)。周辺(低位市場/新市場)で、別の評価軸で伸びている提案は何か? それを“既存KPIから切り離した場”で学習できているか?(←ジレンマ観点)
理由:ジレンマは「主流顧客への最適化」が原因で起きる。別評価軸の芽を、既存の採算基準で早期に潰していないかを点検する。“深掘り(deepening)”が起きている証拠は何か(上位集中・順位安定・新規比率低下など)?
理由:Mark IIは感覚ではなく兆候で確認したい。兆候が強いほど、獲得KPI偏重から蓄積KPI(統合・運用・品質・継続改善)へ舵を切る合理性が増す。
参考文献
シュンペーターの原典:
- Schumpeter, J.A. (1942). Capitalism, Socialism and Democracy. PDF
Mark I/IIに関する主要研究:
- Freeman, C. (1984). The Economics of Industrial Innovation (3rd edition). Frances Pinter.
- Malerba, F., & Orsenigo, L. (1995). Schumpeterian Patterns of Innovation. Cambridge Journal of Economics, 19(1), 47-65.
- Malerba, F., & Orsenigo, L. (1996). Schumpeterian patterns of innovation are technology-specific. Research Policy, 25(3), 451-478. ScienceDirect
- Breschi, S., Malerba, F., & Orsenigo, L. (2000). Technological Regimes and Schumpeterian Patterns of Innovation. The Economic Journal, 110(463), 388-410.
- Fontana, R., Nuvolari, A., Shimizu, H., & Vezzulli, A. (2012). Schumpeterian patterns of innovation and the sources of breakthrough inventions. Working Paper
産業分類に関する実証研究:
- Castellacci, F., & Zheng, J. (2010). Technological regimes, Schumpeterian patterns of innovation and firm-level productivity growth. Working Paper
用語の歴史に関する研究:
- Schumpeterian theory and research on forestry innovation and entrepreneurship (2022). Forest Policy and Economics, 138. ScienceDirect
クリステンセンの原典:
- Christensen, C. M. (1997). The Innovator’s Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail. Harvard Business School Press.
- Christensen, C. M., Raynor, M. E., & McDonald, R. (2015). What Is Disruptive Innovation? Harvard Business Review, December 2015. HBR
クリステンセン研究所の公式資料:
- Christensen Institute. Disruptive Innovation Theory. Official Website
企業事例関連:
- The Guardian. (2012). Kodak falls in the ‘creative destruction of the digital age’. Link
- Arthnova. When Nokia Ignored the iPhone and Lost Everything. Medium. Link
- Ars Technica. (2016). Intel retires “tick-tock” development model. Link
- Toyota Global. Toyota Production System. Official Site


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