ITストラテジスト(ST)は、経営・事業の狙いを踏まえて「どのIT投資を、どんな順番で、どう統制して実現するか」を説明できるかが問われる試験です。
現場で価値が出るのは、次のような立ち位置の人です。
社内IT企画・情シス(事業部との合意形成、投資判断、ロードマップ策定)
SIer上流(提案・企画、要件の前段、グランドデザイン)
コンサル志望(課題設定→打ち手→実行計画→効果測定)
PM/PMO志望(実行統制、リスク、体制、進捗・品質)
このページでは、「ITストラテジスト」というキーワード検索で多い疑問(難易度/合格率/勉強時間/過去問/試験日/役に立つ?/年収・市場価値)に、結論から答えます。
試験概要(科目・時間・形式)
STは、午前Ⅰ・午前Ⅱ・午後Ⅰ・午後Ⅱで構成され、試験時間・出題形式・出題数(解答数)はIPAが公開しています。
午前Ⅰ:50分/四肢択一/30問
午前Ⅱ:40分/四肢択一/25問
午後Ⅰ:90分/記述式/3問中2問解答
午後Ⅱ:120分/論述式/2問中1問解答
「難しい」と言われる原因は、暗記量より 午後(記述・論述)の再現性 です。
午後(記述・論述)は“論点の型”で再現性が決まります。頻出論点を一問一答(結論1行+採点ポイント)で確認できる「ITストラテジスト 午後(科目B)頻出論点 一問一答」も併用してください。
IPAは、応用情報・高度試験(ST含む)および支援士について、令和8年度(2026年度)からペーパー方式からCBT方式へ移行する予定と発表しています。試験時期は「一定期間内で複数日実施」に変更予定で、詳細は後日案内とされています。なお、知識・技能の範囲、出題形式(多肢選択/記述/論述)、出題数、試験時間は変更なしとされています。(IPAのページ)
また令和9年からは大幅な改革がなされるという検討案が出ています。(日経クロステック記事)
難易度は高い?「難しい」と言われる理由
結論:ビジネス寄りの人にとっても難易度は高めです。ただし、才能勝負ではありません。難しさの正体は主に4つです。
正解が1つではない問いに、筋の通った答えを書く必要がある(午後Ⅱ)
投資・効果・リスク・体制・統制まで含めて“実行可能性”を語る必要がある
設問要求を外すと一気に失点する(午後Ⅰ)
時間制約が厳しく、書き切る設計が必要(午後Ⅰ90分、午後Ⅱ120分)
「偏差値」「難易度ランキング」も見かけますが、公式の尺度ではないので参考程度にして、午後問題を実際に読んで“書けそうか”を確認するのが確実です。
合格率はどれくらい?
例として、IPA公表の 令和7年度春期では、STは 受験者5,586人/合格者836人/合格率14.97% です。
合格率は年度で上下しますが、体感としては「午後で落ちる」人が多い試験です。
| 開催 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 平成21年秋期 | 5,514 | 754 | 13.67% |
| 平成22年秋期 | 5,413 | 755 | 13.95% |
| 平成23年秋期 | 4,839 | 705 | 14.57% |
| 平成24年秋期 | 5,090 | 713 | 14.01% |
| 平成25年秋期 | 4,810 | 677 | 14.07% |
| 平成26年秋期 | 4,466 | 671 | 15.02% |
| 平成27年秋期 | 4,487 | 656 | 14.62% |
| 平成28年秋期 | 4,594 | 645 | 14.04% |
| 平成29年秋期 | 4,747 | 700 | 14.75% |
| 平成30年秋期 | 4,975 | 711 | 14.29% |
| 令和元年秋期 | 4,938 | 758 | 15.35% |
| 令和3年春期 | 3,783 | 579 | 15.31% |
| 令和4年春期 | 4,450 | 660 | 14.83% |
| 令和5年春期 | 4,972 | 769 | 15.47% |
| 令和6年春期 | 5,327 | 842 | 15.81% |
| 令和7年春期 | 5,586 | 836 | 14.97% |
| 平均 | 4,827 | 706 | 14.63% |
勉強時間の考え方(目安より“配分”が重要)
勉強時間は個人差が大きいので、目安の数字よりも 配分 を決める方が失敗しません。ビジネス寄りの受験者は、次の傾向が出やすいです。
午前は“必要十分”で固める(取り切るより、落とさない)
※試験の幅は広いので、情報処理技術者試験合格経験がないと時間がかかります午後Ⅰ:設問分解→根拠抽出→短文化を手順化する
午後Ⅱ:骨子テンプレで「書ける状態」を先に作る
学習計画例(12週間モデル)
1〜2週:過去問を眺めて「問われ方」を固定化(解けなくてOK)
3〜6週:午後Ⅰの型づくり(設問要求を外さない練習)
7〜10週:午後Ⅱの骨子→1本→改善を繰り返す(題材を固定)
11〜12週:時間を測って通し演習(午後Ⅰ→午後Ⅱの集中力配分)
過去問の使い方(“解く”より“再現”)
過去問題はIPAで公開されています。
最短ルートは、「解説を読む」よりも 採点される答えを再現することです。
午後Ⅰ(記述)で点が伸びる回し方
先に設問を読み、「何を/何個/何文字で」を確定
本文から根拠に線を引き、本文語彙で短く書く
書き出しを型に寄せる(背景→課題→方針→効果→留意点 など)
午後Ⅱの「題材」とは?まずはここを押さえる
午後Ⅱは、いきなり文章を書き始める試験ではありません。最初に出てくる「題材(テーマ)」とは、**あなたが論述の対象にする構想・計画・推進施策の“ネタ”**のことです。ビジネス寄りの受験者なら、次のような題材が書きやすいです。
基幹刷新(ERP更改、業務標準化、業務改革)
DX/業務改革(顧客接点の改善、業務プロセス再設計)
データ活用(KPI設計、DWH/BI、データガバナンス)
クラウド移行の方針策定と統制(優先順位・移行計画・ガバナンス)
セキュリティ統制強化(委託先管理、監査対応、リスク低減)
本番は「2題から1問を選ぶ」—だから“選ぶ準備”が合否を左右する
午後Ⅱは、題材(テーマ)の異なる問題が2題出題され、そのうち1題を選択して論述します。
※2023年10月の試験要綱改定前は、3題から1題を選択する形式でした。
ここで重要なのは、問題を見てから題材を考えると、ほぼ確実にブレることです。
だから先に、
書ける題材候補を「最低2つ」用意する
どちらを選ぶかの「優先順位」を決めておく
この2つをやっておくと、試験当日に迷いません。
題材候補の優先順位は、次の5点で決める
「自分にとって書きやすい題材」を、感覚ではなくチェックで決めます。
具体性:現状・課題・制約(予算/期限/人材/法令など)を3つ書ける
意思決定:なぜ今やるのか、投資の理由(KPI/効果)を置ける
施策の並び:優先順位つきで施策を3〜5個、ロードマップ順に言える
統制:体制(会議体/役割)・進捗/品質/変更管理まで書ける
リスク対応:題材固有のリスクを3つ挙げ、対策とモニタリングを書ける
この条件を満たす題材ほど、午後Ⅱは安定します。
「題材は当面1つに固定」:第1候補を完成させてから、第2候補へ
おすすめの進め方はこれです。
練習はまず 第1候補の題材に固定して、骨子→本文→改善を繰り返す
第2候補は、最初は“薄く”でOK(題材カードだけ作る)
本番は問題を見て、第1候補で無理がある場合だけ第2候補に切り替える
固定することで、「毎回ゼロから考える」をやめられます。結果として、具体性・一貫性・統制/リスク/効果測定の抜け漏れが減り、点が安定します。
試験日はいつ?CBT化で何が変わる?
試験日などのスケジュールはIPAの案内で更新されます(例:令和7年度春期は4月20日)。
またIPAは、令和8年度(2026年度)から高度試験等をCBT方式へ移行予定で、科目名も「午前Ⅰ/Ⅱ・午後Ⅰ/Ⅱ」から「科目A-1/A-2・科目B-1/B-2」へ変更予定としています。
重要なのは、試験時間は変更なしと明記されている点です。
「役に立たない?」への結論:STは“経営の言語でITを実行計画に変える力”が身につく
ITストラテジスト(ST)の学習で得られる価値は、IT部門の視点だけでなく、経営・事業の視座(売上/コスト/リスク/成長)からIT投資を判断し、実行可能な計画に落とし込む力が鍛えられる点にあります。
言い換えると、STは「技術の知識を増やす」より、意思決定の型を身につける資格です。
STで身につく「実務に効く視点」
課題設定:現状→本質課題→優先順位(何からやるべきか)
投資判断:ヒト・モノ・カネ(+時間/リスク)を並べて、費用対効果と実現性を評価する
実行設計:体制・役割・会議体・意思決定ルール・委託管理など、やり切る仕組みを作る
効果測定:KPIを置き、モニタリングして改善する
だから「役に立つ」と言える人は、合格後に成果物へ転用できる
STの考え方は、次の成果物にそのまま使えます。
企画書:現状→課題→方針→施策→投資→効果→リスク/留意点
ITロードマップ:優先順位・依存関係・移行計画・体制・マイルストーン
ガバナンス/統制設計:会議体、権限、例外管理、KPI、リスク管理、委託先管理
逆に「役に立たない」と言われるパターン
STが役に立たないと評価されがちなのは、知識が“座学のまま”で、実装(実行)を意識した計画に落ちていないときです。典型例は次の通りです。
施策が一般論で、制約(予算・人員・期限・現場抵抗)を踏まえていない
体制・意思決定・統制が弱く、誰がどう進めるかが書けない
KPIや効果測定がなく、やりっぱなしになる
リスクが抽象的で、具体的な対策やモニタリングがない
STが“効く人”は、合格後に次へ転用します。
企画書(現状→課題→施策→投資→効果→リスク)
ITロードマップ(優先順位・依存関係・移行計画)
ガバナンス/統制(体制、会議体、KPI、例外管理)
逆に「役に立たない」と感じるのは、知識が成果物に落ちず、職務の役割が変わっていないケースです。
ダブル資格で市場価値を伸ばす
ここは誤解を避けるために先に言います。
資格だけで年収が上がる保証はありません。 ただし採用・評価では、STの「戦略」に対して別資格で「実行力/統制/経営会話」を補強できると強いです。
1) 社内IT企画・情シス向け(合意形成×統制が武器)
おすすめのダブル資格
ST + ITサービスマネージャ(SM)/ITIL系:運用定着・継続改善まで語れる
ST + システム監査技術者(AU):ガバナンス、内部統制、委託先管理が強くなる
ST + 情報処理安全確保支援士(SC):投資判断に“リスク根拠”を添えられる(説得力が上がる)
効き方(年収/評価)
「企画したが定着しない」を潰せる人は強いです。統制・運用・セキュリティまで語れると、責任範囲が広がりやすい。
2) SIer上流(提案/企画)向け(提案の勝率を上げる)
おすすめのダブル資格
ST + プロジェクトマネージャ(PM)/PMP:実行計画とリスク統制が提案に乗る
ST + AU(監査):要件定義前の統制設計、委託・契約観点で差がつく
ST + SC(セキュリティ):提案段階で「守り」を入れられる
効き方
「良い話」ではなく「実現できる話」にできると単価が上がりやすい(提案の説得力が増す)。
3) コンサル志望向け(経営会話を厚くする)
おすすめのダブル資格
ST + 中小企業診断士:経営課題→施策→実行→効果測定まで一気通貫になりやすい
ST + PMP:提案だけでなく“デリバリー”で評価されやすい
ST + 会計/ファイナンス系の学習(資格でも可):投資対効果、意思決定の言語が増える
効き方
ST単体だと「ITの戦略」止まりになりがち。経営の言語が増えると、案件の上流へ寄りやすい。
4) PM/PMO志望向け(実行統制の専門性を固める)
おすすめのダブル資格
ST + PMP(またはPM系):体制・進捗・品質・リスクが明確に語れる
ST + SM/ITIL系:移行後の運用設計まで見据えた計画にできる
ST + AU:監査対応、統制、例外管理の筋が良くなる
効き方
PMOで評価されるのは「炎上を止める」ではなく「炎上させない仕組み」。統制観点があると強いです。
ダブル資格の選び方はシンプルです。
ST=何をやるべきか(意思決定)、相方資格=どう実行し、どう守り、どう定着させるか を埋める。
よくある質問(FAQ)
ITストラテジストは難しいですか?
→ 午後(記述・論述)の再現性が鍵です。試験時間・形式はIPA公開の通りです。
ITストラテジストは、午後(記述・論述)で設問要求を外さずに書き切る再現性が合否を左右します。学習では、頻出論点を“結論1行”で言える状態にし、採点ポイントと失点パターンまでセットで覚えると伸びが速いです。直前期は章ごとに流し読みして抜けを潰すのが有効。過去問復習の補助として、頻出論点の一問一答をまとめた『ITストラテジスト 午後(科目B)頻出論点 一問一答』もご確認ください。合格率はどれくらい?
→ 例:令和7年度春期は14.97%です。試験日はいつ?CBTで何が変わる?
→ スケジュールはIPAで更新されます。CBT移行は2026年度予定、科目名変更予定、試験時間は変更なしとされています。役に立たないって本当?
→ 結論は「座学を実務に活かせるかどうか」で決まります。STの学習内容を、経営実態に即した企画書(目的・投資・効果・リスクまで)、ガバナンス/統制設計(体制・意思決定・例外管理・KPI)、そしてリアリティのあるロードマップ(優先順位・依存関係・期限・要員・移行計画)に落とし込み、最後までやり切れる人ほど仕事の成果に直結します。逆に、一般論のまま「実行設計」まで踏み込めないと、役に立ちにくいと感じられやすいです。年収は上がる?
→ 保障はありませんが、責任範囲が広がる(企画→統制→定着まで語れる)と評価に効きやすいです。ダブル資格で補強すると強いです。


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