Summary
実験/最適化(Experimentation & Optimization)で、A/Bテストやチャネル運用の“優先度決め”を速く正確にする中核フレーム。
OODAは「観察→状況判断(解釈)→決断→実行を高速に回す“意思決定ループ”」
いつ使うか:市場・競合・アルゴリズムが日々変わり、仮説と打ち手を短サイクルで更新したいとき。
秀逸ポイント
OODAの肝は「O(Orient:状況判断)」です。単なる“観察→判断→実行”の順番ではなく、知識・経験・文化・仮説(メンタルモデル)で世界を“どう解釈するか”が勝敗を分けるため、同じデータでも結論が割れます。
さらにOODAは、意思決定を小さく刻んで“ループ”させ、相手(競合・市場)の意思決定サイクルの内側に入る=学習速度で優位を取る発想。注意点は、OODAを「4工程の円」として機械的に回すと、最重要のOrientが抜け落ち“スピードだけ速い誤判断”になりがちなことです。
AIマーケでは、LLM要約や異常検知でObserveを速くしつつ、Orientの前提(顧客理解・ポジショニング)を定期的に検証する設計が効きます(自動化でのバイアス混入には要注意)。
提唱者・発表時期
提唱者は米空軍大佐のジョン・ボイド(John R. Boyd)です。空中戦の分析や軍事戦略の研究を通じて、1970年代に意思決定の競争優位を説明する枠組みとしてOODA(Observe-Orient-Decide-Act)を提示しました。
ボイドは学術論文よりもブリーフィング(スライド)で思想を展開し、「Patterns of Conflict」等の講義で広く影響を与えます。
1987年8月版の『A Discourse on Winning and Losing』にはOODAループが”Observation-Orientation-Decision-Action time cycle or loop”として記載されています。ただし、1995年6月28日の『The Essence of Winning and Losing』では、より詳細な図解が追加され、概念が視覚的に整理されました。
詳細説明
OODAは「速く回すほど勝てる」という単純な運用論ではなく、“不確実で対立のある環境”で意思決定を更新し続けるための認知モデルです。ボイドの最終版スライドでは、O(Orient)が遺伝・文化・過去経験・新情報・分析/統合などの影響を受け、ここでの解釈がD(Decide)とA(Act)を規定します。
つまり、競争優位は「情報量」よりも「解釈と仮説の質」に寄る、というのが核心です。
一方で、世の“4つの円”として描かれるOODAは、ボイド本人の説明を単純化しすぎた図式だ、とする指摘もあります。OODAを逐次プロセスとして扱うと、最重要のOrientがスキップされやすく、ただの反射神経ゲームになります。
OODAと関連フレームの違い(ざっくり比較)
| フレーム | 起点 | 得意な状況 | 落とし穴(欠点/弱点) |
|---|---|---|---|
| OODA | Observe/Orient(状況の変化) | 競合対応、危機対応、運用型マーケ(広告・SEO・SNS) | 速度偏重で誤判断/「Orientの仮説」が固定化 |
| PDCA | Plan(計画) | 反復作業の品質改善、安定運用 | 早期コミットで環境変化に弱い |
| STPD | See(事実を見る) | 前例がない課題の構造化、データ起点の改善 | Planに落ちるまで時間がかかりやすい |
マーケ実務への落とし込み(AIマーケ含む)
Observe:計測設計(KPI/イベント/ログ)、競合・市場のシグナル監視(検索順位、入札単価、SNS言及など)
Orient:顧客セグメント/JTBD、ポジショニング、仮説ツリー、因果のあたり(“相関で動かない”)を言語化。LLM要約は補助だが、前提がズレると誤導されます
Decide:インパクト×確度×コストで優先順位、ガードレール指標(短期CVだけでなくLTV/解約/ブランド毀損)
Act:小さく出して学ぶ(A/Bテスト、バンディット、クリエイティブの段階配信)→結果を次のObserveへ
AIでOODAを「自動化」しようとすると、速度は上がる一方で、データの偏り・説明不能性・自動化バイアスが意思決定の脆弱点になります。だからこそ、Orientの前提(何を“勝ち”とするか/どの顧客のどんな文脈か)を、定期的に人間が再点検する運用設計が重要です。
具体例/活用案
1) 競合に“先回り”するためのOODA(Competitive Marketing)
Reforgeでは、競合マーケを「OODAで回す」実務フレームとして整理しています。Observeで競合の新機能・価格改定・広告クリエイティブ・SEOの伸長ページを検知し、Orientで「相手が取りに来た需要(Frame of Reference)は何か/自社のPODはどこか」を言語化。Decideで“勝ち筋仮説”に沿った反撃(比較ページ、指名検索対策、レビュー誘導、セールス資料の更新など)を決め、Actで小さく配信して効果を見ます。ポイントは、勝ち筋が外れていればOrientに戻り、仮説自体を更新することです。
2) リアルタイム施策(ただし“戦術だけ”にしない)
2013年のスーパーボウル停電時、Oreoは即興的な投稿で注目を集めました。
ただし、この手の“瞬間芸”はObserve/Actだけが目立ちやすく、Orient(ブランドの許容範囲・法務/炎上リスク・目的)が事前設計されていないと再現不能です。加えて業界では、戦略のない“ウォールーム”が消耗戦になりやすい、という反省も語られています。
OODAは“速さ”そのものより、“判断を更新し続ける仕組み”として使うのが本質です。
3) 運用型マーケ × AIで回す(広告/SEO/SNS)
Observe:異常検知でCPA悪化や検索順位急落を早期検知(人が気づく前にアラート)
Orient:LLMで「何が変化したか」を要約→人が原因仮説を立て、検証計画に落とす
Decide:検証の優先度(影響×確度×復旧スピード)を決める
Act:配信面・入札・LPの一部だけを変える等、“可逆な一手”から着手
(OODAをマーケ判断に使う解説は、SaaSの実務ガイドでも一般化しています)
よくある誤用(注意)
「とにかく回せ」と言って、Orient(仮説・目的・勝ち筋)が空のままA/Bテストを量産する
Observeの計測が弱いのに、意思決定だけを速くして“間違いを加速”する
PDCAのようにPlanを作り込みすぎて、変化に追随できない
すぐ使える問い(Killer Question)
いまの“Observe”は、顧客の行動変化(検索意図・離脱理由・口コミ)まで捉えていますか?それとも自社KPI(CVR/CPA)だけですか?(KPI偏重だとOrientが歪み、最適化が局所解に落ちます)
Orientで置いている前提(ターゲット、文脈、価格受容、競合比較軸、訴求メッセージ、勝ち筋仮説)は、最後にいつ更新しましたか?(前提が古いと、速いOODAほど誤判断を増幅し、改善が“空回り”します)
Actは“可逆な一手”(配信面・入札・文言・LPの一部変更・セグメント切替・予算移管)から始めていますか?それとも大規模改修を先に打ちますか?(戻せない施策を先に打つと学習コストが跳ね、ループが止まります)
参考文献リスト
一次ソース(ボイド本人の著作)
Boyd, John R. (1995). The Essence of Winning and Losing (June 28, 1995). https://ooda.de/media/john_boyd_-_the_essence_of_winning_and_losing.pdf
Boyd, John R. (1987/2018). A Discourse on Winning and Losing (Edited by Grant T. Hammond). Air University Press. https://www.coljohnboyd.com/static/documents/2018-03__Boyd_John_R__edited_Hammond_Grant_T__A_Discourse_on_Winning_and_Losing.pdf
Boyd, John R. (1976). Destruction and Creation. U.S. Army Command and General Staff College. https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a6/Destruction_%26_Creation.pdf
Boyd, John R. (1986). Patterns of Conflict. https://www.coljohnboyd.com/static/documents/1986-12__Boyd_John_R__Patterns_of_Conflict__PPT-PDF.pdf
学術・軍事機関
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Johnson, J. (2023). Automating the OODA loop in the age of intelligent machines: reaffirming the role of humans in command-and-control decision-making in the digital age. Defence Studies, Taylor & Francis. https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/14702436.2022.2102486
U.S. Marine Corps University. (n.d.). Colonel John Boyd’s Thoughts on Disruption. MCU Journal. https://www.usmcu.edu/Outreach/Marine-Corps-University-Press/MCU-Journal/JAMS-vol-14-no-1/Colonel-John-Boyds-Thoughts-on-Disruption/
Air University Press. (n.d.). A Discourse on Winning and Losing. https://www.airuniversity.af.edu/AUPress/Display/Article/1528758/a-discourse-on-winning-and-losing/
Richards, C. (2020). Boyd’s OODA loop: It’s not what you think. Necesse. https://ooda.de/media/chet_richards_-_boyds_ooda_loop_its_not_what_you_think.pdf
実務事例
Kimmel, Brianne. (n.d.). How to Grow Market Share by Stealing It From Competitors. Reforge. https://www.reforge.com/blog/competitive-marketing-growth
Honan, Mat. (2013). How Oreo Won the Marketing Super Bowl With a Timely Blackout Ad on Twitter. Wired. https://www.wired.com/2013/02/oreo-twitter-super-bowl/
PDCA関連
Lean Enterprise Institute. (n.d.). Plan, Do, Check, Act (PDCA) — A Resource Guide. https://www.lean.org/lexicon-terms/pdca/
Moen, Ron. (2020). Foundation and History of the PDSA Cycle. Deming Institute. https://deming.org/wp-content/uploads/2020/06/PDSA_History_Ron_Moen.pdf
The Knowledge Academy. (n.d.). OODA vs PDCA: A Detailed Comparison. https://www.theknowledgeacademy.com/blog/ooda-vs-pdca/
iSixSigma. (n.d.). PDCA vs. OODA: What’s the Difference? https://www.isixsigma.com/plan-do-check-act/pdca-vs-ooda-whats-the-difference/
百科事典・総合資料
Wikipedia. (n.d.). OODA loop. https://en.wikipedia.org/wiki/OODA_loop
Wikipedia. (n.d.). John Boyd (military strategist). https://en.wikipedia.org/wiki/John_Boyd_(military_strategist)
Wikipedia. (n.d.). Super Bowl XLVII. https://en.wikipedia.org/wiki/Super_Bowl_XLVII
Wikipedia. (n.d.). PDCA. https://en.wikipedia.org/wiki/PDCA
学術論文(比較研究)
Cordeiro, L. (2018). Cycle OODA X PDCA cycle in the decision making process. ResearchGate. https://www.researchgate.net/publication/327138597
Sangkachan, T. (2022). Applying the OODA and PDCA models in order to enhance the agility and adaptability of government to win the COVID-19 war: Lessons learned from Taiwan. Humanities, Arts and Social Sciences Studies. https://so02.tci-thaijo.org/index.php/hasss/article/view/244001


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