OKR

Marketing Frameworks

Summary

OKR:実験/最適化の現場で「狙う成果」と「測る指標」を同時に揃える目標設定の型です。

ひとことで言うと「成果に直結する“測れる目標設定”」

いつ使うか:KPIが増えて優先順位が崩れたとき、四半期で集中テーマを決めてA/Bテスト→学習→改善を回し、迷いなくチーム横断でKGIに向けた打ち手を揃えたいとき。

秀逸ポイント

OKRの強みは、KGI→戦略→施策→KPIの“つながり”を、チームが同じ言葉で共有できる点です。Objectiveはあえて野心的に置き、Key Resultは数値で「達成した/してない」が判定できる形にする。これにより、会議が「頑張った話」ではなく「どの指標が動いたか/学習は何か」に寄ります。さらに、OKRを公開して相互参照できる状態にすると、マーケ→プロダクト→CSの依存関係が早く露出し、実験の優先順位が揃います。Googleのガイドでは、野心的OKRは6〜7割達成が適正で、採点して学習に使う発想も紹介されています。AIマーケ(自動レポート、要因分解、次の施策案生成)と組み合わせると、チェックインの“意思決定コスト”を下げられます。

提唱者・発表時期

OKRの起源は、ドラッカーのMBO(Management by Objectives、1954年の著書『The Practice of Management』で提唱)にさかのぼるのが一般的です。
その後、IntelでAndy Groveが優先順位と実行を揃える仕組みとして発展させ、John Doerrが学んでGoogle創業初期に持ち込んだことが広く知られています(Doerrは1999年のGoogleでOKRを紹介した経緯を自身の文章で説明しています)。
加えて、Doerrの著書『Measure What Matters』(2018)が普及を大きく加速させました。

詳細説明

1) OKRは「目標」ではなく“運用システム”

OKR(Objectives and Key Results)は、組織・チームの集中テーマをObjectiveで言語化し、達成判定をKey Result(主要成果指標)で数値化する枠組みです。KRは「やった/やってない」ではなく「成果が出た/出てない」を測るのが肝。Doerrの説明でも、KRは“測定可能で検証可能”であることが強調されます。

2) KPI/KGI/SMARTとの違い(混同が事故の元)

用語役割典型例よくある誤解
KGI事業の最終ゴール(北極星)売上、粗利、ARR四半期で動かせないKGIをそのままOKRにする
KPI健康診断・運用指標(継続監視)CVR、CPA、LTV、継続率KPIを全部“今期の最重要”にして優先順位が崩壊
SMART目標文の品質基準Specific/Measurable…Objectiveまで“安全に達成できる”水準に落として伸びない
OKR「今期の集中」と「成果判定」を揃えるObjective+複数KRKRがToDo(施策リスト)になり、成果が測れない

補足:SMARTはKR(数値と期限)には相性が良い一方、ObjectiveまでSMARTに寄せすぎると“伸び”が消えがちです。

3) 「コミット型」と「ストレッチ型」を分ける

OKRは「必達のコミット型」と「挑戦のストレッチ型」を分けて運用する考え方があります。Googleのガイドでは、野心的OKRは平均6〜7割達成が適正で、0.0〜1.0で採点して学習に使う運用も紹介されています。
一方で、期日・品質が厳格な案件(例:法令対応、ローンチ期限が固定)は、コミット型(100%前提)に寄せる方が破綻しにくいです。

4) 「OKR=銀の弾丸」ではない(形骸化とゲーム化)

OKRは強力ですが、Doerr自身も“銀の弾丸ではない”と述べています。評価・査定と直結しすぎるとゲーム化が起きやすい点は要注意です。
また、「GroveがOKRの“発明者”という語りは誇張で、MBOの延長に過ぎない」という異論もあります(用語の境界は議論が残ります)。

5) 実務での作り方(マーケ向けの最小手順)

  • KGI(またはNorth Star)を1つ置く(例:新規ARR、受注数)

  • Objectiveは3つ以内:顧客行動の変化として書く

  • KRは2〜5個:遅行(売上寄与)×先行(SQL化率、CVR、CAC)を混ぜる

  • 施策はInitiativesへ分離(広告入稿やLP改修はKRに入れない)

  • 週次チェックインで、KR推移と学習を更新(A/Bテストの次の一手へ)

6) 2026年の最新トレンド

AIとOKRの統合 2026年現在、AI技術とOKRの統合が急速に進んでいます:
AI支援による目標設定: 過去データを分析し、実現可能性の高いObjectiveを提案
リアルタイムKR追跡: AI が自動的にKRの進捗を監視し、アラートを発信
予測分析: 現在のペースで目標達成可能か、AIが予測とレコメンデーションを提供

【参考】OKR Institute: “How AI is Transforming Strategy Drafting with OKRs” (2025)

具体例/活用案

例1:Google創業初期にOKRを導入(“全部やる”を防ぐ)

Doerrが1999年にGoogleの創業初期へOKRを紹介したエピソードは、本人の文章や記事(著書抜粋)で語られています。小さな組織ほど「全部やる」が起きやすいので、Objectiveで“捨てる勇気”を作り、KRで成果だけを見る——という使い方が象徴的です。

例2:公開OKR文化(GitLabのハンドブック)

GitLabはOKR運用に関するページを公開しており、「OKRは(戦略に沿って)KPIの達成に向けた実行計画を明確化し、組織のアラインメントを作る」という位置づけが確認できます。自社でも(社内限定で)OKRを見える化すると、マーケ→プロダクト→CSの依存関係が早く露出し、実験の打ち手が揃いやすくなります。

例3:マーケOKRを“成果”で縛る(公開例:WorkBoard)

公開例では、マーケ/売上系のKRに「CAC回収期間」「LTV/CAC」など“成果の指標”を置く形が示されています。自社に当てはめる際は、母数定義(どの期間・どのチャネルを含むか)を先に固めると、KPIの解釈ズレを防げます。

例4:マーケOKR例(Microsoft Learnの公開例)

Microsoftの公開例では、たとえば「マーケティング・ファネルを改善し、業界で選ばれるベンダーになる」といったObjectiveに対し、「競合からの新規顧客比率」「MQL数」「マーケ起点パイプライン金額」などのKRを置き、Initiative(施策)として「マーケ資料更新」を分けて記載しています。まさに“タスクと成果を混ぜない”型の見本です。

ありがちな誤用(注意喚起)

  • KRがToDo化:「LPを公開する」「広告を出す」など“やること”だけ。→KRは成果(CVR/CPA/SQL化率)で縛り、施策はInitiativesへ。

  • KPI全部入りOKR:ダッシュボードの指標を全部KRにする。→今期の仮説に直結する2〜5個へ絞る。

  • 査定直結でゲーム化:達成率100%を強制し、低いKRを置く。→学習を阻害。ストレッチ型は“6〜7割達成で成功”という運用も紹介されています。

  • Objectiveが曖昧:「ブランド力を上げる」だけ。→“誰のどの行動がどう変わるか”まで具体化。

すぐ使える問い(Killer Question)

  1. 今期のObjectiveは、KGIに最短で効く仮説として“捨てる領域”まで含めて1〜3個に絞れていますか?(チャネル別KPIを全部追うと局所最適化になり、チーム横断の意思決定と学習が確実に遅れます)

  2. Key Resultは、活動ではなく成果(アウトカム)で、SMARTに近い形(数値・期限・判定基準が白黒)になっていますか?(測れないKRは議論を感想戦に戻し、施策の中止・継続判断を鈍らせます)

  3. 週次チェックインで、KRの変化→要因→次のA/Bテスト→撤退判断まで更新できていますか?(AIで集計・要因分解を支援しても、更新が止まるとOKRはすぐ形骸化し、組織が達成率を守るゲームに変わります)

 

参考文献リスト

一次ソース

  1. Google. (n.d.). Guides: Set goals with OKRs. re:Work. https://rework.withgoogle.com/intl/en/guides/set-goals-with-okrs
  2. What Matters. (n.d.). OKRs History | Andy Grove and Intelhttps://www.whatmatters.com/articles/the-origin-story
  3. Drucker, P. F. (1954). The Practice of Management. Harper & Row. ISBN: 9780060878979
  4. Doerr, J. (2018). Measure What Matters: How Google, Bono, and the Gates Foundation Rock the World with OKRs. Portfolio/Penguin. ISBN: 9780525536222

企業公式ドキュメント

  1. GitLab. (2025). Overview of Objectives and Key Results (OKRs). GitLab Handbook. https://handbook.gitlab.com/handbook/company/okrs/okrs-basics/
  2. Microsoft. (n.d.). Introduction to Microsoft Viva Goals. Microsoft Learn. https://learn.microsoft.com/en-us/viva/goals/intro-to-ms-viva-goals

学術・教育機関

  1. Wikipedia contributors. (2025). Management by objectives. Wikipedia, The Free Encyclopedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Management_by_objectives

専門機関・ツールベンダー

  1. OKR Institute. (n.d.). Intel Operation Crushhttps://okrinstitute.org/operation-crush/
  2. Asana. (2025). What are OKRs? Objectives & Key Results Guide [2025]https://asana.com/resources/okr-meaning
  3. Perdoo. (n.d.). The ultimate guide to OKR — Master OKRs in 15 minuteshttps://www.perdoo.com/resources/online-guides/okr-guide
  4. WorkBoard. (n.d.). The Fundamentals of OKRs (Objectives & Key Results)https://www.workboard.com/okrs/

業界メディア

  1. Workpath. (n.d.). Google’s OKR success story. Workpath Magazine. https://www.workpath.com/en/magazine/okr-google
  2. Peoplelogic. (n.d.). A History of Objectives and Key Results (OKRs)https://peoplelogic.ai/blog/history-of-objectives-and-key-results

2026年最新トレンド

  1. NextAgile. (2026). How CXOs Align OKRs With AI Strategy For 2026: Proven Guidehttps://nextagile.ai/blogs/okr/how-cxos-align-okrs-with-ai-strategy/
  2. OKR Institute. (2025). How AI is Transforming Strategy Drafting with OKRshttps://okrinstitute.org/how-ai-is-transforming-strategy-drafting-with-okrs/

日本語ソース

  1. 電通報. (n.d.). How can OKR be linked to corporate growth? Consider the difference with KPI and MBOhttps://dentsu-ho.com/en/articles/9000066
  2. Kaonavi. (n.d.). KGIとは?【意味をわかりやすく】KPI・KSF・OKRとの違い、数値化https://www.kaonavi.jp/dictionary/kgi/

コメント

タイトルとURLをコピーしました