DMAIC

Marketing Frameworks

Summary

実験/最適化カテゴリの中で、施策改善を「思いつき」から「再現性あるプロセス」に変える“型”です。

ひとことで言うと「定義→測定→分析→改善→管理で、成果を固める改善サイクル」

いつ使うか:CVR・CPA・LTVなどKPIが伸び悩み、原因が複合で“打ち手が当たらない”ときに効きます。

秀逸ポイント

DMAICの強さは、「改善」より前に“定義と測定”を分厚く置く点です。マーケ改善は、クリエイティブや媒体のせいにしがちですが、まずCTQ(重要品質特性=KPIの上位概念)を決め、測定の信頼性まで整えることで、原因究明が“議論”から“検証”に変わります。
さらに最後がControl(管理)なので、A/Bテストで一度勝って終わりにならず、運用・SOP・監視(ダッシュボードや管理図)で成果を維持できます。AIマーケの文脈でも、VOC(顧客の声)の要約・分類、異常検知、要因探索などを組み込むと、分析の初速と再現性が上がります。

提唱者・発表時期

DMAICは、シックスシグマにおける「既存プロセスを改善する」ための中核メソドロジーとして普及しました。シックスシグマ自体はMotorolaで1980年代に展開され、1986年に導入されたという説明が一般的です。
その後、GEでは1995年9月にJack Welchがシックスシグマを最優先に掲げ、全社展開が加速したことが一次情報として整理されています。
DMAICは、国際規格としてはISO 13053-1:2011が「Define/Measure/Analyse/Improve/Controlの5フェーズ」を明記し、製造だけでなくサービス/トランザクションにも適用可能としています。

詳細説明

DMAICは「既存プロセスが顧客期待や性能基準を満たしていない」状況で、長期解を実装するための構造化された問題解決アプローチです。各フェーズが前工程の成果物に依存するため、途中で“思いつきの改善”に逸れにくいのが特徴です。

背景(PDCAとの関係、Leanとの接続)

DMAICはしばしばPDCA/PDSAと比較されます。学術的には、DMAICは問題解決プロセスとしてPDCAと近縁で、共通する科学的方法の系譜(測る→学ぶ→変える)を持つと整理されています。一方でDMAICは、統計的分析や役割(ベルト、チャンピオン等)を伴う“プロジェクト型の改善インフラ”になりやすい点が実務上の差分です。
Lean(ムダ排除)とSix Sigma(ばらつき・欠陥低減)を統合したLean Six Sigmaの文脈でも、DMAICは中核のロードマップとして位置づけられています。

関連用語との違い(比較表)

フレーム主目的向いている課題典型アウトプット
DMAIC既存プロセスの性能改善と定着原因が複合・データで切り分けたいCTQ、ベースライン、要因分析、改善案、管理計画
PDCA/PDSA日常改善・学習ループ現場で回す小さな改善の連鎖仮説→実行→評価→標準化(軽量)
DMADV(DFSS)新規プロセス/製品の設計既存をいじっても限界、ゼロから設計要件→設計→検証(新規設計向け)
A/Bテスト運用打ち手の優劣判定施策候補が明確、短期で勝ちたい仮説・実装・統計判定(ただし“定着”は別途設計)

フェーズ別に、マーケ実務へ落とす(テンプレート観点)

  • Define:問題を「KPIの不調」ではなく「顧客要求を満たせていないプロセス」として言語化。VOC→CTQツリー(例:CVRの背後に“信頼”“不安解消”“初回価値体験”など)/プロジェクト憲章(範囲・成功指標・期限)。

  • Measure:GA4やCRMのイベント定義、計測漏れ、重複、母数のゆがみを潰し、ベースラインを“信用できる形”で確定。必要なら測定システム自体を見直します(マーケの落とし穴はここ)。

  • Analyze:セグメント別(流入元×デバイス×新規/既存×意図)に分解し、要因を仮説→検証。相関で終わらせず、可能なら因果(介入可能なレバー)へ寄せます。

  • Improve:施策を実装し、効果検証(A/B、準実験、DOE発想)で“勝ち筋”を確定。勝ち施策を標準化できる粒度まで落とします。

  • Control:ダッシュボード+運用ルール(閾値、アラート、リリース手順、監査)で再劣化を防止。人が替わっても回る状態にします。

注意:DMAICは万能ではありません。既存プロセスの改善が前提で、そもそも再設計(DFSS/BPR)が必要なケースでは“適合しにくい”ことが規格上も示されています。

具体例/活用案

1) 旅行系Webサイト:SEO×体験品質をDMAICで改善

ある旅行Webサイトの事例では、Defineで「ユーザー体験の不調(高い直帰等)」を課題化し、MeasureでGoogle Analytics等の指標を把握、Analyzeでキーワードや導線の問題を特定し、Improveでコンテンツ最適化や検索意図に沿った改善を実施、Controlでモニタリングを設計しています。結果として、オーガニックの表示回数・クリック・CTRなどの改善が報告されています(施策の中にSEO実務の具体が含まれている点が“マーケ寄りDMAIC”として示唆的です)。

2) 清涼飲料のボトリング企業:Sales/Marketingを含む価値ドライバー改善

清涼飲料のボトリング企業の改善報告では、Sales & Marketing領域を含むプロジェクト群をDMAICで回し、Value Driver Map(価値ドライバーの可視化)を使って「何を改善すれば価値(成果)に効くか」を構造化しています。マーケ改善が“施策の羅列”になりやすい組織ほど、ドライバー→KPI→施策の因果鎖を先に揃えるのは有効です。

3) GEの展開:製造から“商用(commercial)”へ拡張

GEでは当初製造中心で始まり、1997年以降にcommercial quality(商用領域)へフォーカスを広げたと整理されています。マーケ・営業・顧客接点は、まさに“サービス/トランザクション”で、ISO規格が想定する適用範囲にも入ります。

誤用パターン(よくある失敗)

  • Measureを飛ばす:「データはあるはず」で進め、後で母数や定義が崩れて結論が全部ひっくり返る。

  • DMAICを“儀式”にする:チャーターや報告は厚いが、介入可能な要因(レバー)が特定できていない。

  • クリエイティブ改善を“数値の勝ち”だけで固定:短期CTR最適化でブランド毀損やLTV悪化を招く(Controlで上位KPIまで監視するのが筋)。

すぐ使える問い(Killer Question)

Q1: DMAICとPDCAの違いは何ですか?

A: DMAICは「測定(Measure)」フェーズを独立させ、データの信頼性確保を重視します。PDCAは迅速な仮説検証に適していますが、DMAICは統計的根拠に基づく改善に強みがあります。

Q2: DMAIC導入に必要な期間はどのくらいですか?

A: プロジェクト規模により異なりますが、一般的に3〜6ヶ月。Define/Measureフェーズに全体の40〜50%の時間を割くことが推奨されます。

Q3: マーケティング部門でもDMAICは使えますか?

A: はい。記事内の旅行系Webサイトの事例のように、CVR改善、SEO最適化、顧客満足度向上などで実績があります。

Q4: DMAICを成功させる3つの鍵

1. 「測定」に時間をかける   – データの信頼性がすべての基盤
2. Control(管理)を設計する – 人が替わっても成果を維持できる仕組み
3. 短期最適化を避ける – 上位KPIとの整合性を常に確認

すぐ使える問い(Killer Question)

  1. いま“定義”している課題は、KPIではなく「顧客要求を満たせないプロセス」として書けていますか?
    理由:定義がズレると、以後の測定・分析が全部“別の問題”になります。

  2. Measureの段階で「その数値は意思決定に耐える」と断言できますか(定義・欠損・重複・計測漏れ)?
    理由:マーケ最適化の失敗原因の多くは、改善案ではなく“測り方”にあります。

  3. Improveで勝った施策は、Controlで「再現・監視・逸脱時の手当て」まで設計されていますか?
    理由:最適化は“1回勝つ”より、“勝ちを維持する仕組み”でROIが決まります。

参考文献リスト

一次ソース(国際規格・公的機関)

  1. ISO (International Organization for Standardization). (2011). ISO 13053-1:2011 Quantitative methods in process improvement — Six Sigma — Part 1: DMAIC methodologyhttps://www.iso.org/standard/52901.html

  2. American Society for Quality (ASQ). (n.d.). An Inside Look at Six Sigma at GEhttps://asq.org/quality-resources/articles/an-inside-look-at-six-sigma-at-ge

  3. Six Sigma Online. (n.d.). The History of Six Sigma: From Motorola to Global Adoptionhttps://www.sixsigmaonline.org/six-sigma-history/

企業公式ドキュメント

  1. General Electric. (1998-2001). Annual Reports. GE Corporate Archives.

  2. Forbes. (1998). Revealed at last: the secret of Jack Welch’s successhttps://www.forbes.com/forbes/1998/0126/6102044a.html

  3. 東芝. (1998-2010). MI運動(Management Innovation)シックスシグマ導入事例https://web.archive.org/web/20100517045517/http://www.toshiba-sigma.com/sigma/mgt/2_2ma_quality.htm

学術・教育機関

  1. De Mast, J., & Lokkerbol, J. (2012). An analysis of the Six Sigma DMAIC method from the perspective of problem solving. International Journal of Production Economics, 139(2), 604-614. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0925527312002277

  2. Smętkowska, M., & Mrugalska, B. (2018). Using Six Sigma DMAIC to improve the quality of the production process: a case study. Procedia-Social and Behavioral Sciences, 238, 590-596. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1877042818300697

  3. Mittal, A., Gupta, P., Kumar, V., Al Owad, A., Mahlawat, S., Kumar, A., & Gautam, S. (2023). The performance improvement analysis using Six Sigma DMAIC methodology: A case study on Indian manufacturing company. Heliyon, 9(4), e14625. https://www.cell.com/heliyon/fulltext/S2405-8440(23)01832-7

  4. Chakrabarty, A., & Chuan Tan, K. (2007). The current state of six sigma application in services. Managing Service Quality: An International Journal, 17(2), 194-208. https://www.emerald.com/insight/content/doi/10.1108/09604520710735191

  5. Kumar, P., Singh, D., & Bhamu, J. (2021). Development and validation of DMAIC based framework for process improvement: a case study of Indian manufacturing organization. International Journal of Quality & Reliability Management, 38(9), 1964-1991. https://www.emerald.com/insight/content/doi/10.1108/ijqrm-10-2020-0332

  6. Kansal, J., & Singhal, S. (2017). Application and validation of DMAIC Six Sigma tool for enhancing customer satisfaction in a government R&D organization. International Journal for Quality Research, 11(4), 883-906. http://www.ijqr.net/journal/v11-n4/13.pdf

日本語文献

  1. Wikipedia日本語版. (n.d.). シックス・シグマhttps://ja.wikipedia.org/wiki/シックス・シグマ

  2. 日本規格協会(JSA). (n.d.). シックスシグマに関する解説https://webdesk.jsa.or.jp/

  3. 田中博昭. (2011). 改善活動を推進する改善リーダー育成プログラム. 横河技報, 54(1), 25-28. https://web-material3.yokogawa.com/19/15358/tabs/rd-tr-r05401-005.jp.pdf

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