ペルソナ

Marketing Frameworks

Summary

ターゲティングと顧客理解(Targeting & Insight)の中核として、チームの顧客像を揃えます。

ペルソナとは「意思決定のための“仮想の顧客代表”」です。

新施策の訴求・チャネル・体験設計の判断がブレるときに使います。


秀逸ポイント

ペルソナは「資料を作ること」ではなく、判断を速く・鋭く・再現可能にするための道具です。具体的には、①誰に何を約束するか(価値提案)、②何を捨てるか(優先順位とトレードオフ)、③どの言葉で刺すか(コピー/訴求軸)、④どの接点に投資するか(SNS・広告・LP・営業)、⑤どの不安を先回りで潰すか(障壁除去)——この5つの判断を“1人の顧客代表”に落としてブレを減らします。
切り口が鋭くなるのは、年齢や属性よりも、目的(Jobs/Goals)・不安(Fears)・制約(Context)・意思決定プロセス(Triggers/Barriers)・使う言葉(Vocabulary)が明確になるからです。Nielsen Norman Group(NN/g)も、ペルソナは「ユーザーの文脈・動機・ニーズを思い出し、意思決定に使うための短縮表現」であり、“what/why”に根差す必要があると述べています。
この「判断まで落とす」設計ができると、次の具体例(大和ハウス等)のように、商品企画や訴求、体験設計まで一貫して動かせます。


提唱者・発表時期

「ペルソナ」という言葉自体は心理学などでも用いられますが、実務(プロダクト設計/UX)での“ペルソナ法”を広めた文脈としては、インタラクションデザイン領域での普及が大きいです。インタラクションデザイン(人とサービスのやり取り=操作の流れや反応を設計する領域)で、ペルソナは設計判断のブレを減らす道具として普及しました。Alan Cooperは書籍『The Inmates Are Running the Asylum』の文脈で、Goal-Directed Designにおける“personas”に触れており、同書が1999年前後に刊行されたことが本文中でも示唆されています。
その後、UXリサーチの実務知として整理・普及させている代表的機関の一つがNN/gで、ペルソナを「ユーザー理解と設計判断のための実務的アーティファクト」として定義し、作り方や落とし穴も含めて体系化しています。
マーケティング領域では「Buyer Persona(マーケティング・ペルソナ)」として定着し、例えばHubSpotは「理想顧客の架空表現」であり、実データと調査で複数作り、施策や開発の整合に使うと説明しています。


詳細説明

1) ペルソナは「セグメンテーション×ターゲット」なのか?

結論から言うと、似て見えますが目的が違います

  • STP(セグメンテーション/ターゲティング)は「市場をどう切り、どこを狙うか」を決める枠組み。

  • ペルソナは「狙う相手の意思決定・行動を、現場の判断に落とす」ための具体像。

STPが“Where to play”の設計だとすると、ペルソナは“How to win(どう刺し、どう進ませるか)”を日々の施策判断に変換する翻訳器です。NN/gも、ペルソナは“what/why”に根差し、単なる属性相関(デモグラやアクセス解析の相関)だけで作るべきではないと注意しています。

2) 関連用語との違い(混同しやすいポイント)

概念目的アウトプットペルソナとの違い
セグメンテーション市場を切るセグメント定義“分類”が中心。個の意思決定まで落としにくい
ターゲット攻める相手を選ぶ優先市場/顧客群“選択”が中心。打ち手の一貫性は別途必要
ICP(Ideal Customer Profile)B2Bの「勝てる顧客条件」企業像(業種・規模・課題など)企業単位の適合。ペルソナは“人”の動機・障壁に強い
JTBD成果(片づけたい用事)を捉えるジョブ仮説目的理解が強い。ペルソナは文脈・感情・接点まで含めやすい
カスタマージャーニープロセス設計段階×接点×感情“時間軸”。ペルソナは“主体”。両方で精度が上がる
エンパシーマップ共感の整理Think/Feel/See/Do“ワークショップ向き”。ペルソナは運用の基準点になりやすい

3) ペルソナの3類型(作り方の前提)

NN/gはペルソナを大きく3つに整理しています。

  1. プロトペルソナ:短時間で仮説を揃える(ただし新規調査なし=思い込みの温床になり得る)

  2. 定性ペルソナ:インタビュー等の定性調査で、動機・障壁・期待から類型化(多くのチームの最適解)

  3. 統計(ミックス)ペルソナ:定性→サーベイ→統計解析でクラスタを抽出(大規模・専門性が必要)

4) 作り方(実務の最短手順:マーケ×UX共通)

  1. 目的を固定:何の判断を揃えたいのか(訴求?LP?SNS?商品要件?営業ストーリー?)

  2. 現場データを集約:商談メモ、問い合わせ、レビュー、解約理由、検索語、SNS反応など

  3. 定性で“why”を掘る:インタビュー/同席/VOCで「期待・不安・制約・言葉」を抜く

  4. パターン化:似た“意思決定の型”を束ね、3〜6体程度に絞る

  5. 判断項目を埋める:やりたいこと/避けたいこと/検討トリガー/NG表現/よく使う情報源

  6. 施策テンプレに接続:広告訴求、LP構成、FAQ、SNS投稿テーマ、営業トークへ“翻訳”

  7. 検証と更新:数値(CVR/CPA/商談化/継続率)と定性(ヒアリング)で更新

5) 良いペルソナの条件(運用できる“判断装置”になっているか)

  1. 判断が書ける:その人なら「何を選び、何を捨てるか」が言える

  2. 障壁が書ける:躊躇点/反論/不安が具体で、FAQや比較表に落とせる

  3. 言葉が書ける:本人が使う語彙でコピーが作れる(抽象語で逃げない)

  4. データに根がある:統計型なら、サーベイ→クラスタリング(例:k-means等)で“似た反応群”を抽出し、差分特徴(=判断の分岐点)を言語化する。NN/gも統計ペルソナは統計分析で“クラスタが出る”設計であると述べています。

  5. チームの共通語になる:会議で「この施策はA向け?B向け?」が即答できる

  6. 更新可能:季節性・競合・SNS環境の変化で“陳腐化”する前提が置かれている

補足:生成AIの使いどころ
クラスタやVOCを“物語化して共有しやすくする”、あるいは“ペルソナ別の施策案・コピー案を量産して検討する”用途は強力です。一方で、実データ収集をサボるためにAIで作ると「一般論のペルソナ」になりがちで、HubSpotも“AIは調査を置き換えるのではなく、強化に使うべき”と注意しています。


具体例/活用案

1) 大和ハウス:ペルソナで意思決定を統一(国内の鉄板事例)

Web担当者Forumの整理では、大和ハウス工業がペルソナを設定し、それをコンセプトにした住宅「EDDI’s House」を展開し建設したと紹介されています。
この手の成功パターンは、ペルソナを“イメージ資料”ではなく、

  • 仕様の優先順位(何を付け、何を削るか)

  • 見せ方(訴求軸、導線、比較の切り口)

  • 社内合意(企画・設計・販促・営業の共通判断)
    判断基準として運用した点にあります。
    ※ご提示の日本経済新聞(2012年1月13日付)の記事でも取り上げられているとされていますが、ここでは第三者公開情報で裏取りできる範囲(上記)に限定して記載しました。

2) カルビー:ペルソナで新商品を企画(国内)

同じ整理の中で、カルビーが若い女性のペルソナを設定し、ミニサイズのポテトチップス「Jagabee」を開発した例が挙げられています。
ポイントは「若い女性」ではなく、**利用文脈(いつ/なぜ/何が嬉しいか)**まで落としたことです。ここまで落ちると、パッケージ・容量・価格・販売チャネル(コンビニ/EC)・SNS訴求が一貫します。

3) 英国GDS:アクセシビリティ・ペルソナを“体験できる”形で運用(海外)

英国のGovernment Digital Service(GDS)は、アクセシビリティ上の障壁を可視化するための7つのアクセシビリティ・ペルソナを公開しています。
さらに、各ペルソナを“疑似体験”できるログインプロファイルを用意し、チームで「ペルソナテスト」を行う取り組みを紹介しています。
重要なのは、「ペルソナは便利だが実ユーザー検証の代替ではない」という但し書きを明確にした上で、開発初期の発見を増やす“判断支援”として使っている点です。

4) SNSマーケティングに落とす(実務テンプレ:すぐ使える)

ペルソナをSNS運用に接続するなら、次の3点を“判断項目”として固定すると強いです。

  • 情報源:その人はどのSNSで、何を検索し、誰を信じるか(一次情報/口コミ/比較)

  • 投稿テーマ:不安を下げる投稿(FAQ・比較・失敗談)/背中を押す投稿(事例・具体手順)

  • 行動導線:保存→再訪→DM/問い合わせ→LP→CVのどこを狙うか

ここに生成AIを使うなら、「実データ(VOC、勝ちクリエイティブ、商談ログ)」を渡して、“ペルソナ別の投稿100本案”を作らせ、検証しながら学習するのが堅実です(AIで“ゼロから人格を創作”しない)。

誤用の典型(注意喚起)

  • デモグラだけのペルソナ:例「20〜45歳、都会、アクティブ」など。HubSpotの例でも、属性は揃っているのに“商品に紐づく痛み”が欠落しており、結果として刺さらないと指摘されています。

  • プロトペルソナを事実扱い:仮説合わせの成果物を、検証なしに運用してしまう(思い込みの固定化)。

  • 多すぎるペルソナ:10体以上作って“覚えられない”。判断の道具になりません。


すぐ使える問い(Killer Question)

  1. この施策は「誰にでも良い話」になっていないか?
    ペルソナを1体に固定したとき、訴求の主語・不安・比較軸が具体化します。曖昧な訴求はCPA高騰とCVR低下を招きやすいです。

  2. ペルソナの“躊躇点”を、接点ごとに先回りで潰せているか?
    SNS→LP→申込→オンボーディングの各段階で障壁は変わります。障壁が残ると「検討停滞」「離脱」「返品・解約」に直結します。

  3. 勝ち筋の差分は「属性」ではなく「意思決定の型」にあるのでは?
    クラスタリング等で反応パターンを見たとき、差分特徴(比較の観点/重視指標/情報源)が見えると、AIによる施策案生成も“当たりやすい”母集団になります。

 

参考文献リスト

ペルソナの理論と定義

  1. Alan Cooper (1999). The Inmates Are Running the Asylum: Why High Tech Products Drive Us Crazy and How to Restore the Sanity. Sams Publishing.

    • 初版刊行日:1999年3月23日
    • 出典:Goodreads
  2. The Encyclopedia of Human-Computer Interaction, 2nd Ed. – Personas

  3. Nielsen Norman Group (NN/g) – 3 Persona Types: Lightweight, Qualitative, and Statistical

    • プロトペルソナ、定性ペルソナ、統計ペルソナの3類型を定義
    • URL: NN/g
  4. Nielsen Norman Group – Personas: Study Guide

    • “A persona is a fictional, yet realistic, description of a typical or target user of the product”
    • URL: NN/g
  5. HubSpot Blog – The definition of a buyer persona [in under 100 words]

    • “A buyer persona is a fictional representation of a company’s ideal customer”
    • URL: HubSpot
  6. HubSpot Blog – How to create detailed buyer personas for your business

    • ペルソナ作成の詳細ガイド
    • URL: HubSpot

アクセシビリティペルソナ

  1. UK Government Digital Service (GDS) – Accessibility Personas

    • 7つのアクセシビリティペルソナ(Claudia、Ashleigh、Ron、Chris、Pawel、Simone、Saleem)
    • URL: GDS
  2. UK Government Accessibility Blog – Using persona profiles to test accessibility

  3. UK Government Accessibility Blog – Creating empathy with users who have accessibility needs

  4. GOV.UK – Understanding disabilities and impairments: user profiles

国内企業の事例

  1. 戦略ケース研究会|大和ハウス

  2. 日本経済新聞 -「ミセスキヨフジ」がほしい物 広がる新開発手法

    • 大和ハウス工業のxevoEDDIにおけるペルソナマーケティング
    • URL: 日経新聞
    • ※注:全文閲覧には会員登録が必要
  3. 大和ハウス工業 – デザイナーズエコ住宅「xevoEDDI(ジーヴォ・エディ)」発売

  4. 大和ハウス工業 -「EDDI’s House(エディズハウス)」の敷地対応力を向上

  5. 日経クロストレンド -「ペルソナ巧者」がはまった落とし穴 Jagabee原点回帰でV字回復

  6. 日本経済新聞 – カルビー「じゃがビー」V字回復 ペルソナ再設定が実る

    • Jagabeeのペルソナ「27歳独身女性、文京区在住、ヨガと水泳に凝っている」
    • URL: 日経新聞
    • ※注:全文閲覧には会員登録が必要

その他のペルソナマーケティング事例と解説

  1. 開発前に知っておきたい!ペルソナマーケティングの概要・定義と実例

    • 大和ハウス工業のEDDI’s House事例を含む
    • URL: Akkodis
  2. ペルソナマーケティングとは?具体例や設定メリットと作成手順を解説

  3. 文京区に住むヨガが好きな27歳独身女性…カルビー「じゃがビー」がペルソナで大成功した理由

  4. 参考にしたいペルソナを用いたマーケティング成功事例

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