1. Summary
SWOT分析(SWOT Analysis):市場・競争の診断で「状況整理→戦略案出し」まで一気通貫にする定番フレーム。
「強み・弱み×機会・脅威で、打ち手候補を4象限に落とす。」
いつ使うか:新規施策・新商品・既存事業テコ入れの前に、論点を漏れなく整理して“勝ち筋の仮説”を作るとき。
2. 秀逸ポイント
SWOTの秀逸さは、情報を“分類して終わり”にせず、内部(Strength/Weakness)と外部(Opportunity/Threat)を掛け合わせて戦略オプション(SO/WO/ST/WT)を生成できる点です。さらに、元祖に近い運用は「各項目に根拠を添え、対話で収束させ、実行計画へ渡す」設計になっています。単なる棚卸しではなく、意思決定の材料に変わります。 サイエンスダイレクト+1
3. 提唱者・発表時期
起源は一枚岩ではありません。近年の整理では、SRI(Stanford Research Institute)のLong Range Planning Serviceが1965年に提唱した SOFT(Satisfactory / Opportunity / Fault / Threat) が源流で、後にStrength/Weaknessに読み替わりSWOTへ連なる、とされています(当時は参加型・根拠付け・対話を重視)。 サイエンスダイレクト
一方で「1960年代にAlbert Humphreyが起源」とされることもありますが、決定的な“唯一の創始者”は定まらないという整理もあります。 NCBI
また、TOWS(戦略生成を強く意識した派生)はWeihrichが1982年に整理し、SO/WO/ST/WTの型を普及させました。 サイエンスダイレクト
4. 詳細説明
SWOTは、企業・事業・施策の「いま」を、内部要因(S/W) と 外部要因(O/T) に分けて可視化し、次に クロスSWOT(TOWS)で戦略案へ変換する手法です。もともとのSOFT/SWOTは「各論点に証拠を添えて評価し、対話で合意形成し、上位の目的・戦略へ渡す」設計でした。 サイエンスダイレクト
SWOTの基本手順(実務での最短ルート)
目的を固定(例:新規獲得を伸ばす/解約を下げる/新市場へ入る)
S/W/O/Tを“事実ベース”で列挙(各1行=根拠リンク or データ添付)
重要度×確からしさで上位5つ程度に絞る(優先順位が命)
SO/WO/ST/WTで「施策の形」に落とす(誰が・何を・いつまでに)
KPIと検証計画を接続して実行へ
関連フレームとの使い分け(混ぜないのがコツ)
| フレーム | 主に見るもの | 典型アウトプット | SWOTとの関係 |
|---|---|---|---|
| PESTEL | マクロ環境 | 外部変化の棚卸し | O/Tの“素材”を増やす |
| 5フォース | 業界構造 | 収益性の圧力 | T(脅威)の解像度を上げる |
| 3C | 顧客/競合/自社 | 競争の論点整理 | S/Wの根拠、O/Tの裏取り |
| VRIO | 資源の強さ | 持続優位の判定 | Sの“本物度”チェック |
よくある誤用(ここでSWOTが死ぬ)
Hill & Westbrookは、SWOTが「長いリスト化」「一般的で意味が薄い」「優先順位なし」「後工程で使われない」状態になりがちだと指摘しています。 サイエンスダイレクト
典型的なミスは、(a) 内部/外部を混同する、(b) “願望”をStrengthやOpportunityに入れる、(c) 競合比較なしで強みと言い切る、(d) 施策(やりたいこと)をOpportunityに置いてしまう、の4つです。
関連キーワード例:SWOT分析 やり方/テンプレ/クロスSWOT/TOWS/内部環境 外部環境/戦略立案 フレームワーク。
考えるときのポイント:S/WとO/Tが入れ替わる“あるある”を乗り切る
SWOTで「強みと弱み」「機会と脅威」が逆になったり、結局“当たり前”のリストになったりするのは、ほぼ必然です。原因はシンプルで、分類の軸が曖昧(内外・可制御性・比較対象・時間軸が混ざる)だからです。ここでは、4象限を“使える形”に研ぎ澄ますためのコツを、判定ルールと手順に落とします。
1) まず「内外」を可制御性で切る(内部=自分で変えられる/外部=自分では変えられない)
S/WとO/Tが入れ替わる最大の要因は、「外部要因を内部の問題として書く」「内部の能力を外部の追い風として書く」混同です。迷ったら、次の判定で切ります。
内部(S/W):自社が設計・投資・運用で改善できる要因(人材、プロセス、データ、ブランド資産、プロダクト、チャネル、価格設計など)
外部(O/T):自社が直接コントロールできない環境要因(市場成長、規制、技術トレンド、競合の動き、景気、人口動態など)
迷った項目は“原因”まで掘るのがコツです。たとえば「CPAが高い」は現象で、内部に原因(訴求・導線・計測・オファー・配信設計)があるならWへ、「競合が入札を吊り上げた」のように外部が主因ならTへ寄せます。
2) 「比較」がない強みは強みではない(S/Wは“競合比較”で決める)
強みと弱みがひっくり返るのは、絶対評価で書いてしまうからです。S/Wは必ず比較文にします。
悪い例:強み「ブランドがある」
良い例:強み「同カテゴリで第一想起率が高い(競合A/Bより指名検索が多い)」
悪い例:弱み「体制が弱い」
良い例:弱み「施策の立ち上げリードタイムが長い(意思決定と制作が分断されている)」
“競合が同じだけ持っている”なら、それは強みではなく前提条件です。ここを徹底するだけで、SWOTの粒度が一段上がります。
3) O/Tは「自社にとっての符号」で決める(同じ外部変化でも、機会にも脅威にもなる)
外部変化が“機会か脅威か”で迷うのは当然です。なぜなら、多くの外部変化は両義的だからです。乗り切るコツは、条件文にすることです。
Opportunityの書き方:「もしXが起きるなら、自社はYで取りに行ける」
Threatの書き方:「もしXが起きるなら、自社はZが毀損する」
例:法規制強化
O:「規制対応の知見と運用があるため、参入障壁が上がるほど相対優位が出る」
T:「未対応領域があり、対応コストとリードタイムで競争力が落ちる」
つまり、O/Tは“現象”ではなく、**自社への影響(どこが伸びる/壊れる)**で決めます。ここで曖昧さを許容し、同じ事象をOとTの両方に置くのも上級者のやり方です(ただし条件を明記する)。
4) 「当たり前SWOT」を壊す3つのテスト
SWOTが当たり前になるのは、抽象語(品質が高い、顧客志向、DXが遅い)で逃げるからです。次のテストで強制的に具体化します。
テストA:数字・事実テスト
「その一文に、数字・観測事実・根拠リンクを1つ添えられるか?」
添えられないなら“願望”か“印象”の可能性が高いです。
テストB:一意性テスト(競合も言える?)
「競合Aでも同じことが言えるか?」
言えるならSではなく“業界の標準”です。差別化になりません。
テストC:打ち手変換テスト(行動に落ちる?)
「それはSO/WO/ST/WTに変換して“誰が何をする”に落ちるか?」
落ちないなら粒度が粗いか、論点がズレています。
5) 4象限を“うまく埋める”ための実務手順(詰まりにくい順番)
4象限をいきなり埋めようとすると、必ず詰まります。おすすめの順番は次です。
T(脅威)から書く:まず“負け筋”を先に確定(競合の土俵・規制・価格圧力・代替技術など)
W(弱み)を書く:その脅威に対して脆い内部要因を列挙(体制・導線・計測・供給能力など)
S(強み)を書く:同じ脅威環境でも勝ち得る資産・能力を抽出(比較で)
O(機会)を書く:強みが活きる外部追い風を“条件付きで”定義
この順番の利点は、「脅威×弱み=最優先で潰すべき穴(WT)」 が先に見えることです。戦略はまず“穴を塞ぐ”と急に進みます。
6) 迷いやすい項目の「置き場所」早見表(入れ替わり対策)
| ありがちな項目 | 迷いの原因 | 置き方のコツ |
|---|---|---|
| 市場が伸びている | OにもTにも見える | 「自社が取れる条件」ならO、「競合が取り切る」ならT(条件文で両方OK) |
| ブランドがある | みんな言いがち | “指名検索/第一想起/紹介率”など比較でSにする。根拠がないなら削る |
| 価格が高い | SにもWにも見える | プレミアムが成立している(継続率・粗利)ならS、失注原因ならW |
| 広告費が高い | 内外が混ざる | 競合入札が原因ならT、CVR・訴求・計測の問題ならW(原因まで掘る) |
| 人材不足 | ほぼ全社にある | 自社固有の“ボトルネック工程”に落とす(例:分析→施策化が詰まる) |
7) “4象限を戦略に変える”ための最後のコツ(SO/WO/ST/WTの一文テンプレ)
SWOTをオリジナリティある成果物にする最短ルートは、各象限の上位項目を「戦略の一文」に変換することです。
SO:「強みSを使って、機会Oを取りに行く。やることは○○」
WO:「弱みWがあるため機会Oを取り損ねる。先に○○を整備する」
ST:「脅威Tに対して、強みSで土俵を変える。戦い方は○○」
WT:「弱みW×脅威Tの組み合わせは致命傷。○○をやらない/撤退条件を決める」
ここまで落ちると、SWOTは“きれいな整理”ではなく、意思決定の武器になります。
5. 具体例/活用案
1) 「SWOT→戦略フレーム」までつなげる(公開資料に学ぶ)
公的な戦略計画では、SWOTを“章立て”として明示し、その後の戦略フレーム(重点領域・施策体系)へ接続する例が多いです。たとえばWHO関連の保健セクター戦略計画では、SWOT分析の章(強み・弱み・機会・脅威の表)を置いた上で、次章で戦略枠組みに落としています。 WHO | Regional Office for Africa
大学の戦略策定でも、Warwickの事例として「SWOTを資源ベース計画に接続し、線形ではなく反復プロセスとして埋め込む」運用が整理されています。 Project Inspire
2) マーケ施策に落とすときの“型”
SO(強み×機会):強みが刺さる市場/セグメントに集中投資(例:高LTV顧客の課題に特化した価値訴求・導入事例・比較表)
WO(弱み×機会):弱みを“作らない設計”に変える(例:オンボード改善、サポート整備、品質保証で不安を潰す)
ST(強み×脅威):脅威の土俵に乗らない(例:価格競争を避け、差別化軸を明確化し訴求一貫性を作る)
WT(弱み×脅威):撤退条件・縮小条件を先に決める(例:CPAが閾値超えならチャネル撤退、代替獲得手段へ移行)
3) 誤用の例(注意喚起として入れておくと親切)
「Opportunity」に“やりたい施策”を書く(機会=外部の追い風、施策=内部の選択です)
「Strength」に“理想像”を書く(根拠のない自己評価は、のちの施策優先度を壊します)
40項目以上並べて満足する(優先順位がないSWOTは、意思決定に使われにくい) サイエンスダイレクト
6. すぐ使える問い(Killer Question)
“強み”は競合比較で成立しているか? 自社だけの自己評価になっていないかを問う。競合が同等に持つなら、それは強みではなく前提条件です。
最大の脅威に対して、勝ち方が“同じ土俵”になっていないか? 価格・機能の殴り合いに入った瞬間に不利なら、土俵を変える戦略(ST)を先に設計すべきです。
SWOTの上位3項目は、KPIと実行計画に変換できているか? 変換できない項目は粒度が粗いか根拠が弱い。SWOTが“後工程で使われない”状態を防ぎます。 サイエンスダイレクト


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