中小企業診断士の「経済学・経済政策」を勉強する上で覚えておくべき用語について、試験概要からピックアップ+α しました。
① 経済指標の見方・読み方
| 用語 | 意味・ポイント |
|---|---|
| 国民経済計算(SNA) | 国全体の経済活動(生産・所得・支出)を体系的に記録した統計。GDP などもここに含まれる。 |
| 国民所得統計 | 家計や企業などの所得の流れをまとめた統計。GNI や国民所得の把握に使う。 |
| GDP(国内総生産) | 「一定期間に国内で生み出された付加価値の合計」。最も基本的なマクロ指標。 |
| 名目 GDP と実質 GDP | 名目:当期の市場価格で評価した GDP。実質:物価変動を除いて「数量ベース」で評価した GDP。 |
| GDPデフレータ | 名目 GDP ÷ 実質 GDP で求める物価水準の指標。経済全体の「総合的な物価指数」として使われる。 |
| GNI(国民総所得) | 「自国居住者の所得の合計」。GDP に海外からの所得を加え、海外への所得支払を引いたもの。 |
| NDP(国内純生産) | GDP から減価償却(固定資本減耗)を差し引いたもの。設備の「すり減り」を除いた純生産。 |
| 三面等価の原則 | 「生産=分配=支出」の3つの面から計測した額は一致する、という SNA の基本原則。 |
| フローとストック | フロー:一定期間にどれだけ流れたか(所得・売上など)。ストック:ある時点での蓄積量(資産残高など)。 |
| 帰属計算 | 実際の取引はないが、経済実態を反映するために「あるはずの取引」を仮に計上する(自家住宅 imputed rent など)。 |
| 雇用統計 | 失業率、有効求人倍率など、労働市場の状況を示す統計。景気判断にも使われる。 |
| 完全失業率 | 「仕事がしたくて求職活動をしているが、仕事が見つからない人」の割合。労働力人口に対する失業者の比率。 |
| 物価指数 | 代表的な財・サービスの価格変動をまとめた指数。CPI・企業物価指数などがある。 |
| パーシェ方式/ラスパイレス方式 | 物価指数の作り方。パーシェ:現在の数量ウェイト。ラスパイレス:基準時の数量ウェイト。 |
| 景気動向指数(DI/CI) | DI:景気が「良い/悪い」と答えた比率で作る拡散指数。CI:各指標の変化率を合成した一致指数。 |
| マネーストック統計(マネーサプライ/マネーストック) | 経済全体に出回っている通貨量(現金+預金など)の統計。日銀が公表。 |
| 国際収支 | 貿易・サービス・所得など、対外取引の収支をまとめた統計。経常収支・金融収支などから成る。 |
| 為替レート | 自国通貨と外国通貨の交換比率。実質実効為替レートなども景気・競争力の重要指標。 |
② マクロ経済理論と経済政策
| 用語 | 意味・ポイント |
|---|---|
| 財市場/生産物市場 | 財・サービスの需給が決まる市場。IS 曲線などで分析。 |
| 貨幣市場 | 貨幣需要と貨幣供給の関係から利子率が決まる市場。LM 曲線で表現。 |
| 労働市場 | 労働需要と労働供給から賃金と雇用量が決まる市場。失業の分析の基礎。 |
| IS-LM分析 | 財市場(IS)と貨幣市場(LM)の均衡から、利子率と所得(国民所得)の同時均衡を求める枠組み。 |
| IS曲線 | 財市場の均衡を示す曲線。利子率が下がると投資が増え、国民所得が増えるので右下がり。 |
| LM曲線 | 貨幣市場の均衡を示す曲線。所得が増えると取引需要が増え、利子率が上昇するので右上がり。 |
| 総需要曲線(AD曲線) | 物価水準と総需要(GDP)の関係。物価が下がるほど実質貨幣残高が増え、需要が増加するので右下がり。 |
| 総供給曲線(AS曲線) | 物価水準と供給量の関係。短期は右上がり(物価上昇で利潤増・生産増)、長期は潜在産出量で垂直とされる。 |
| インフレギャップ/デフレギャップ | 実際の GDP が潜在 GDP を上回る(インフレ)/下回る(デフレ)ときの需要超過・不足の幅。 |
| ディマンドプル・インフレ/コストプッシュ・インフレ | 需要超過が原因のインフレ/原材料価格や賃金上昇などコスト上昇が原因のインフレ。 |
| 完全失業率/非自発的失業 | 完全失業率:統計上の失業率。非自発的失業:働きたくても賃金下げ以外の理由で雇用されない失業。 |
| ケインズ型消費関数/限界消費性向 | C=a+bY の形で表される消費関数。限界消費性向 b は「所得 1 単位の増加のうち、どれだけ消費に回るか」。 |
| 恒常所得仮説 | 人々は一時的な所得変動ではなく、「恒常的な所得水準」をもとに消費を決めるとする仮説。 |
| ライフサイクル仮説 | 生涯の所得を見通して、若年期に借入、中年期に貯蓄、高齢期に取り崩すなど、ライフサイクル全体で消費を平準化するとする考え方。 |
| 乗数効果 | 政府支出など需要の初期増加が、所得・消費の連鎖的増加を通じて、初期額の何倍にも拡大する効果。 |
| 加速度原理 | 需要(生産)増加の変化率に対して、投資がより大きく反応する原理。生産量変化に応じて資本ストックの調整が必要になるため。 |
| 投資の限界効率理論 | 追加的な投資から得られる収益率(限界効率)が利子率を上回る限り投資が行われる、という理論。 |
| トービンの q理論 | q=「資本の市場価値 ÷ 再取得費用」。q>1 なら投資インセンティブが強く、投資が促進されるとする理論。 |
| 貨幣の取引需要/資産需要 | 取引需要:決済のために保有する貨幣。資産需要:債券価格変動リスクなどを考えて、資産として貨幣を持つ需要。 |
| マネーサプライ/マネーストック | 経済に供給されている通貨量。M1〜M3 など区分があり、金融政策の操作対象・説明変数となる。 |
| ハイパワードマネー/貨幣乗数 | ハイパワードマネー=マネタリーベース(現金+日銀当座預金)。貨幣乗数=マネーストック ÷ マネタリーベース。 |
| 貨幣数量説 | MV=PY を基本式とする考え方。貨幣供給量の変化が、長期的には物価水準に比例して反映されるとする。 |
| 利子率/流動性のわな | 利子率:資金の貸し借りの価格。流動性のわな:極めて低い利子率のもとで、人々が貨幣を無制限に保有しようとし、金融政策が効かなくなる状態。 |
| クラウディングアウト | 政府の財政支出拡大が金利上昇を通じて民間投資を押しのける現象。 |
| 財政政策/金融政策 | 財政:政府支出や税制を通じた景気調整。金融:金利・マネーサプライ操作を通じた景気・物価の安定を目的とする政策。 |
| 景気変動/景気循環 | 経済の拡張と収縮を繰り返す動き。景気後退・拡大の局面を持つ周期的なパターン。 |
③ 国際経済と経済政策
| 用語 | 意味・ポイント |
|---|---|
| 比較優位論(比較生産費説) | 各国が「機会費用の低い財」に特化し貿易することで、双方が利益を得られるという理論。 |
| 貿易理論/貿易政策 | 比較優位・ヘクシャー=オーリンなどの理論と、関税・輸入制限など政策全般。 |
| 国際収支 | 貿易収支・サービス収支・所得収支・資本移転などを含む対外取引の収支。 |
| 為替レート | 自国通貨と他国通貨の交換比率。貿易・資本移動・金利などの影響で変動する。 |
| 購買力平価説(PPP) | 通貨の購買力が各国で等しくなるように、長期的には為替レートが調整されるとする理論。 |
| マンデル・フレミングモデル | IS-LM を開放経済に拡張したモデル。為替レート制度(固定/変動)と資本移動の自由度により、財政・金融政策の有効性が変わることを示す。 |
| 国際マクロ経済の理論と政策 | 国際収支・為替・資本移動を考慮したマクロ政策の枠組み全般。 |
④ 主要経済理論
| 用語 | 意味・ポイント |
|---|---|
| 古典派経済学 | セイの法則や完全競争市場を前提に、市場メカニズムによる自動調整(完全雇用)を重視する学派。 |
| セイの法則 | 「供給はそれ自身の需要を生み出す」。供給能力があれば需要不足は生じないとする古典派の基本命題。 |
| ケインズ理論 | 価格・賃金の硬直性や有効需要不足を重視し、短期的には完全雇用が保証されないと考え、財政・金融政策の積極的な役割を主張する理論。 |
| ケインズ型消費関数/限界消費性向 | 所得の増加に比例して消費が増えるという単純な線形消費関数と、それを特徴づけるパラメータ。マクロ消費理論の基本。 |
| 新古典派経済学 | 個人の合理性・限界分析を重視し、市場均衡と資源配分の効率性(パレート効率)を分析する学派。 |
| マネタリズム | 貨幣供給量の安定的な増加を重視し、「インフレは常にどこでも貨幣的現象」とするフリードマンらの考え方。 |
| 恒常所得仮説 | フリードマンによる消費理論。人々は一時的な所得変動にはあまり反応せず、恒常的な所得を基準に消費を決める。 |
| ライフサイクル仮説 | モディリアーニらの理論。人生全体の所得と余命を踏まえ、消費を平準化するように貯蓄・借入行動を取る。 |
| 貨幣数量説 | 貨幣供給量の変化が、長期的には物価水準に比例的に影響するとする考え方。マネタリズムの基礎。 |
| 投資の限界効率理論/加速度原理 | ケインズの投資理論(MEC)と、設備投資が生産量の変化に対して加速度的に反応するという加速度原理。 |
| トービンの q理論 | 金融市場で評価される企業価値と実物資本の再取得費用の比率(q)にもとづき、投資行動を説明する理論。 |
※ ②で扱った IS-LM・AD-AS なども、広い意味では「ケインズ系マクロ理論」の一部です。
⑤ 市場メカニズムと市場の失敗
| 用語 | 意味・ポイント |
|---|---|
| 競争的市場/プライステイカー/プライスメイカー | 完全競争では個々の企業は価格受容者(プライステイカー)。独占・寡占などでは価格決定力を持つプライスメイカーとなる。 |
| 市場均衡/市場の不均衡 | 需要量=供給量となる価格・数量が市場均衡。不均衡は超過需要・超過供給がある状態。 |
| ワルラス的調整過程 | 価格が調整されて均衡が回復するという考え方。超過需要なら価格上昇、超過供給なら価格低下。 |
| マーシャル的調整過程 | 価格は所与として、企業が生産量(供給量)を調整することで均衡に近づくと考える枠組み。 |
| 需要の価格弾力性 | 価格 1%の変化に対する需要量の%変化。絶対値が大きいほど価格に敏感。 |
| 需要の所得弾力性 | 所得 1%の変化に対する需要量の%変化。プラスが上級財、マイナスが下級財。 |
| 公共財(非競合性/非排除性) | 他人が消費しても自分の利用可能量が減らない(非競合性)、対価を払わない人を排除しにくい(非排除性)財。国防・灯台など。 |
| フリーライダー | 公共財の恩恵だけ受け、費用負担をしようとしない人。公共財供給を困難にする要因。 |
| 外部効果(外部性) | 取引当事者以外にプラス・マイナスの影響を与えること。公害(負の外部性)、予防接種(正の外部性)など。 |
| 社会的限界費用 | 企業の私的限界費用に、外部不経済による追加的な社会コストを加えたもの。 |
| ピグー税 | 負の外部性を内部化するため、社会的限界費用と私的限界費用の差に相当する課税を行う政策。 |
| 排出権取引 | 温室効果ガスなどの排出量に上限を設け、その権利を市場で取引させることで、低コストで削減を実現しようとする制度。 |
| 規模の経済 | 生産規模を拡大すると平均費用が低下する性質。固定費の分散や専門化の進展などが要因。 |
| 消費者余剰/生産者余剰 | 消費者余剰:支払っても良い価格 − 実際の価格。生産者余剰:実際の価格 − 供給に必要な最低限の価格。 |
| パレート効率的 | 誰かをより良くしようとすると必ず誰かが悪くなる状態。これ以上パレート改善ができない資源配分。 |
| 市場の失敗 | 公共財・外部性・不完全競争・情報の非対称性などにより、市場メカニズムだけではパレート効率が達成されない状態。 |
⑥ 消費と生産の理論(ミクロ)
| 用語 | 意味・ポイント |
|---|---|
| 効用理論/効用関数 | 消費者が財・サービスの組み合わせから得る満足度を数値で表す考え方と、その関数表示。 |
| 無差別曲線 | 同じ効用水準を与える財の組み合わせを結んだ曲線。右上がりで原点に凸の形が基本。 |
| 限界代替率(MRS) | 無差別曲線の傾き。効用を一定に保ちながら、ある財を 1 単位増やすとき、どれだけ他方の財を減らしてもよいか。 |
| 予算制約/予算制約線 | 所得と財の価格により決まる「購入可能な財の組み合わせ」の制約。グラフでは直線で表す。 |
| 最適消費点 | 予算制約線と無差別曲線が接する点。MRS=価格比 となる点が効用最大。 |
| 上級財/下級財 | 所得が増えると需要が増える財(上級財)、所得が増えると需要が減る財(下級財)。 |
| 奢侈品/必需品 | 所得弾力性が 1 より大きい財(奢侈品)、0〜1 の財(必需品)。いずれも上級財の一種。 |
| 代替財/補完財 | 他方の価格が上がると需要が増える財(代替財)、他方の価格が上がると需要が減る財(補完財)。 |
| 代替効果/所得効果 | 価格変化が需要量に与える影響を、「相対価格の変化による代替効果」と「実質所得の変化による所得効果」に分解したもの。 |
| 需要曲線 | 価格と需要量の関係を表す曲線。通常は右下がり。 |
| 生産関数 | 生産要素(労働・資本など)と産出量の関係を表す関数。 |
| 費用曲線 | 生産量と費用(総費用・平均費用・限界費用)の関係を表す曲線群。 |
| 平均費用(AC) | 総費用 ÷ 産出量。1 単位あたりの費用。 |
| 限界費用(MC) | 産出量を 1 単位増やしたときに増加する費用。生産量決定の最重要指標。 |
| 利潤最大化条件/利潤最大化 | 利潤最大化のため、完全競争では「価格(限界収入)=限界費用」となる産出量を選択する。 |
| 損益分岐点/操業停止点 | 損益分岐点:利益が 0 となる売上・産出量。操業停止点:価格が平均可変費用を下回り、生産を続けるほど損をする境界。 |
| 供給曲線 | 価格と供給量の関係。完全競争企業では、MC 曲線のうち AVC 以上の部分が供給曲線となる。 |
⑦ 組織と戦略の経済学(情報・ゲーム・産業組織)
| 用語 | 意味・ポイント |
|---|---|
| 情報の不完全性/情報の非対称性 | 市場参加者が完全な情報を持たない、または一方だけが有利な情報を持つ状況。 |
| 逆選択 | 契約前の「隠れた特性」により、質の悪い取引相手ほど市場に残りやすくなる問題(例:中古車市場のレモン)。 |
| モラルハザード | 契約後の「隠れた行動」により、相手の監視が効かないことを利用して、本人に有利な行動を取ってしまう問題。 |
| プリンシパル・エージェント関係 | 委託者(プリンシパル)が代理人(エージェント)に行動を委ねる関係。情報の非対称性によりインセンティブ設計が課題になる。 |
| シグナルの利用 | 情報を多く持つ側(求職者など)が、学歴・資格などコストのかかるシグナルを使って自分のタイプを示すこと。 |
| 自己選択メカニズム(スクリーニング) | 情報の少ない側(企業・保険会社など)が、複数の契約メニューを用意し、相手に自ら選ばせることでタイプを識別する仕組み。 |
| ゲーム理論 | 相互依存的な意思決定を分析する理論。戦略的状況での合理的行動をモデル化する。 |
| ナッシュ均衡 | 各プレーヤーが「他者の戦略を所与としたときの最適戦略」を選んでいる状態。誰も単独では戦略変更するインセンティブがない。 |
| 囚人のジレンマ | 個々に合理的な選択(裏切り)をすると、全体としては非効率な結果になってしまう典型的なゲーム。協調の難しさの例。 |
| 独占 | 一社のみが市場を支配し、価格決定力を持つ市場形態。価格は限界費用より高くなり、厚生損失が生じる。 |
| 寡占/寡占の協調行動(カルテル等) | 少数の企業が市場を支配。協調(カルテル)すれば独占的な価格・利潤を実現しやすい。 |
| 製品差別化/独占的競争 | 製品の特徴・ブランドなどで差別化しつつ、多数の企業が競争する市場。価格決定力はあるが、参入により利潤はゼロに近づく。 |
| 規模の経済性/範囲の経済性 | 規模の経済性:生産規模拡大で平均費用が下がる。範囲の経済性:複数製品をまとめて生産するほうがコストが低くなる。 |
⑧ 所得分配と厚生
| 用語 | 意味・ポイント |
|---|---|
| 公正性/公平性 | 所得や福利の配分が「どれだけ公正・公平か」という価値判断。効率性とは別の評価軸。 |
| 生産要素市場 | 労働・資本・土地などの生産要素が取引される市場。 |
| 生産要素報酬(賃金・利子・地代・利潤) | 労働への賃金、資本への利子、土地への地代、企業家への利潤など、生産要素へ分配される所得。 |
| 所得再分配 | 税制・社会保障・給付・補助金などを通じて、高所得層から低所得層へ所得を移転する政策。 |
| 税制/補助金 | 所得税・消費税などの税と、企業・家計への補助金。効率性と公平性のトレードオフが論点。 |
| パレート効率/社会的厚生 | パレート効率は「これ以上誰かを改善できない」状態。社会的厚生は、効率性と公平性をどう評価するかの枠組み全般。 |


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